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第57巻 3号

人為感染によって再現されたアユの異型細胞性鰓病

石川孝典・小松大樹・野中信吾・森 竜也・武田維倫・久保田仁志・和田新平・佐野元彦
 異型細胞性鰓病(ACGD)の原因を明らかにするため,アユのポックスウイルス様ウイルス(PaPV)を含む病魚鰓の磨砕ろ液にアユを暴露し,20°Cで飼育観察した。その結果,暴露4日後からACGDの症状である鰓蓋の開放や水流からの逃避などの異常な遊泳が見られはじめ,6日後から死亡が始まった。感染群の累積死亡率は56%以上となった。死亡魚の鰓では,鰓薄板の癒合や多数の大型異型細胞が観察され,107-109 copeis/mgのPaPVのDNAが検出された。さらに,18°C,23°C,28°Cの飼育水温での感染試験では,18°Cと23°Cの感染群ではACGDの症状を示して死亡があったが,28°Cでは死亡はみられなかった。以上のことから,ACGDの原因はPaPVであること,またその発症は飼育水温の影響を受けることが示唆された。
魚病研究,57(3), 69-75(2022)

養殖ブリ類に見られた吸虫による幼虫移行症

柳 宗悦・米加田 徹・今岡慶明・小川和夫
 2013年に中国から輸入したカンパチ種苗4尾に,赤色から小豆色の体長 2 cmを超える未熟吸虫が腹腔,腎臓または体側筋に寄生する症例があった。病魚の腹腔の一部または全体は吸虫が排泄したと考えられる黒色の粘液状異物で覆われていた。筋肉寄生例では異物は虫体周辺にもみられた。以上のことから本症例は吸虫が未熟のまま宿主体内を動き回る幼虫移行症と考えられた。なお,2012年から2018年に鹿児島県が実施した養殖ブリ類1,968尾の検査では上記4例以外に類似症例は確認できなかった。2017年には,鹿児島県産養殖ブリの切り身で黒色または茶褐色の粘液状異物を呈する事例が発生した。カンパチ由来の幼吸虫やブリ切り身の異物についてrRNA遺伝子の部分塩基配列を決定したところ,吸虫Hirudinella ventricosaの配列と完全に一致し,これらの幼虫移行症は同吸虫に起因することが示された。
魚病研究,57(3), 76-82(2022)

北海道内の淡水飼育サケ科魚類に外部寄生する遺伝子型の異なる鞭毛虫Ichthyobodo spp.のPCRによる判別と走査型電子顕微鏡観察

水野伸也・宮本真人・畑山 誠・勝又義友・西川翔太郎・浦和茂彦
 本研究では,北海道内の淡水サケ科魚類に発生したイクチオボド(IC)症の6症例について,どの遺伝子型のICが原因虫であるか,リボソームRNA遺伝子(rDNA)の分子系統学的解析により調べた。次に,遺伝子型の異なるICを判別するため,PCR法の開発と走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行った。各症例の原因虫はI型:Ichthyobodo necator sensu stricto,II型:I. salmonis,III型:Ichthyobodo sp.に分類された。開発したPCR法により,IC rDNAに由来するPCR産物の電気泳動像から3つの遺伝子型を区別できた。SEM観察では,虫体の形態学的指標により,3つの遺伝子型からI型のみを区別できた。
魚病研究,57(3), 83-94(2022)

サケ科卵のミズカビ病に対するオキシリンクSPの防除効果

倉田 修・羽地 雅・川島 拓也・八木澤 優・齋藤 哲・森 竜也
 無機物の食品添加物で構成されるオキシリンクSPのサケ科卵のミズカビ病に対する防除効果を調べた。室内試験においてSaprolegnia属菌5種に対するオキシリンクSPの殺菌効果を検討した結果,30分間の薬浴では10,000倍以下の希釈で殺菌作用を示した。野外試験では,Saprolegni属菌以外の菌類が発育したサクラマス卵を除き,ニジマスおよびイワナ卵での菌糸発育抑制効果を確認した。魚卵毒性については,生産上大きな被害はないが,ニジマス卵の発眼率および孵化率に影響を与えた。一方,イワナ卵およびサクラマス卵に対する影響は認められなかった。オキシリンクSPによる薬浴はサケ科卵を対象としたミズカビ病の防除に有用であるが,薬浴条件について検討する必要がある。
魚病研究,57(3), 95-102(2022)