ENGLISH


日本魚病学会事務局(2013年1月より)
〒162-0801
東京都新宿区山吹町358-5
アカデミーセンター
TEL:03-5937-5716
FAX:03-3368-2822
E-Mail:jsfp-post@bunken.co.jp
HOME > 魚病研究 > 第57巻 1号

第57巻 1号

海産白点病に対するワクチン開発研究(総説)

渡邊勇歩・良永知義
 海産白点病は絶対寄生性繊毛虫Cryptocaryon irritans(海産白点虫)の寄生によって生じる感染症である。本病は国内外の温水性海産魚養殖場で頻発し,養殖魚の死亡による大きな産業被害を引き起こすため,食用魚に使用可能な著効を示す防除法の開発が望まれている。一方,本虫に一度感染した魚類は本病に対して免疫を獲得することが報告され,それ以降,本病に対するワクチン開発を目指した研究が数多く行われてきた。未だに効果的なワクチンの開発には至っていないが,これまでの研究から多くの知見が集積されてきた。そこで本稿では,本病に対するワクチン開発に関する研究についてこれまでに明らかにされている事柄や問題点をとりまとめた。
魚病研究,57(1), 1-10(2022)

不顕性感染親魚は種苗生産ヒラメParalichthys olivaceusにおけるアクアレオウイルス流行の潜在的な感染源である

河東康彦・前田知己・西岡豊弘・桐生郁也・米加田 徹・松山知正・天社こずえ・山下 勲・川村芳浩・樂 敦司・仙北屋 圭・柳 宗悦・林 亨次・熊谷 明・森 広一郎
 ヒラメ種苗生産に大きな被害を与えるヒラメアクアレオウイルス(HAqRV)感染症に対して防疫対策を講じるために疫学調査を実施した。種苗生産に用いた外観上健康なヒラメ親魚の約60%からHAqRVゲノムが検出され,全検査魚からHAqRVに対する抗体が検出された。HAqRVのRNAポリメラーゼ遺伝子の部分塩基配列による比較では,症例間で塩基配列に違いがあったものの,同一症例内における分離ウイルス,死亡魚および親魚の間では同じ塩基配列であった。以上の結果から,不顕性感染状態のヒラメ親魚は,稚魚に大量死を引き起こすHAqRVの潜在的な感染源になると考えられた。
魚病研究,57(1), 11-19(2022)

国内の養殖ヤマメで初確認された微胞子虫Loma salmonae

井上 僚・柳田哲矢
 2019年に東京都内で養殖ヤマメの魚病診断を行ったところ,鰓に微胞子虫のキセノマが多数確認された。胞子の形態観察と計測を行ったところ,既報のLoma salmonaeのものと概ね一致した。また,リボソームDNAの遺伝子解析では 1,839 bpの塩基配列が得られ,北米のOncorhynchus spp.から得られたL. salmonaeの登録配列と99.9%一致した。以上の結果から,本研究では本微胞子虫をL. salmonaeと同定した。また,2019年10月~2021年7月までに東京都内の3養魚場でL. salmonaeの寄生が4例確認された。Loma salmonaeは北米およびヨーロッパのサケ科魚類養殖で被害をもたらしている。国内においては北海道で,Loma sp.の寄生報告が1例あるが,種同定されたのは初である。また,陸封型のヤマメを含めたサクラマスで寄生が確認されたのは世界初であり,ここに報告を行う。
魚病研究,57(1), 20-25(2022)

マダイPagrus majorの鼻腔はEdwardsiella anguillarumの重要な感染門戸である

遠藤拓海・北村真一・川上秀昌・飯田貴次
 マダイのエドワジエラ症の主な症状は頭部の潰瘍であることから,原因細菌Edwardsiella anguillarumの感染門戸は頭部近くの鼻腔であると仮説を立てた。これを検証するため,鼻腔への感染実験を行った。2.0 × 105~2.4 × 109 cfu/fishの異なる菌数で,合計9回の鼻腔感染を行った。その結果,2回の実験を除いて死亡率は60~70%となった。また,32%の感染魚において,頭部の潰瘍形成が再現された。さらなる確証を得るために,アロンアルファおよび歯科治療に用いるワックスでマダイの鼻腔を閉塞した後に,浸漬法で感染実験を行った。その結果,鼻腔閉塞区の方が未処理区よりも有意に死亡率が低かった。これらの結果から,マダイの鼻腔がE. anguillarumの主要な感染門戸であることが示唆された。
魚病研究,57(1), 26-29(2022)