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第56巻 4号

複数遺伝子型のメガロサイチウイルスに対するリアルタイムPCR法の開発

河東康彦・D. M. Cummins・S. Valdeter・P. G. Mohr・伊東尚史・水野かおり・川上秀昌・L. M. Williams・M. St. J. Crane・N. J. G. Moody
 広範囲な遺伝子型のメガロサイチウイルス(伝染性脾臓腎臓壊死症ウイルス:ISKNV,マダイイリドウイルス:RSIV,ターボット赤体色イリドウイルス:TRBIV)を検出するために,2種類のリアルタイムPCR法を開発し,既報の2つと比較した。評価した全てのリアルタイムPCRの標的配列が含まれる人工合成プラスミドを各遺伝子型について作製して検証試験に用いた。新たに開発した方法は広範囲のメガロサイチウイルスの検出に優れており,検出感度は約2コピー/反応液であった。開発したいずれの方法もRSIV 感染ブリ死亡魚からの検出感度に差はないが,外観上健康な感染魚では新たな方法の一方における検出率が高く,既報とは同等の検出感度であった。
魚病研究,56(4), 177-186(2021)

飼育下ホソアオトビに発生した黒色真菌感染を伴う非結核性抗酸菌症の発生事例

小峰壮史・S. Srivorakul・外丸健太郎・田中議顕・猪鼻真理・深野華子・倉田 修・和田新平
 国内飼育ホソアオトビ群において,連続死亡事例が発生した。それらトビウオ群の頭部皮膚には潰瘍性出血病変を認め,腎臓,脾臓,肝臓などの臓器に白色の微小結節が散在していた。病理組織学的検査により,中心に抗酸菌を含む肉芽腫が全身臓器に確認され,特に腎臓と脾臓で病変が顕著であった。いくつかの個体の腎臓あるいは脾臓において,抗酸菌だけでなく黒色真菌の菌糸も認められた。病変部からは抗酸菌が分離され,分子生物学的解析の結果,大部分の分離菌株はMycobacterium marinumと同定された。さらに真菌培養において黒色真菌が得られ,形態学的および分子生物学的解析の結果,分離真菌はExophiala aquamarinaと同定された。本研究が魚類における非結核性抗酸菌(M. marinum)と黒色真菌(E. aquamarina)の重複感染症例の初報告である。
魚病研究,56(4), 187-198(2021)

日本産マダコにみられた吸虫の寄生

泉 庄太郎・秋山信彦・鈴村優太・小川和夫
 東海から関東にかけての太平洋沿岸各所で採捕されたマダコが飼育中に死亡した。死亡個体を調べたところ,131個体中,77個体の内臓に吸虫が寄生していた。マダコ1個体当たりの最大寄生数は975で,寄生部位は主に腎嚢であった。虫体はほぼ成熟していたが,子宮内の虫卵は未発達であったことから,形態観察では本吸虫の種同定には至らなかった。18S rDNA領域と28S rDNA領域の塩基配列解析ではProctoeces majorに近縁であったことから当該吸虫をProctoeces cf. majorとした。本報はマダコに寄生したProctoeces属吸虫についての初報告である。
魚病研究,56(4), 199-204(2021)

ブリ類のエラムシに対するフェバンテルの効果I:用法用量の検討

白樫 正・西川 智・石井佑治・川上秀昌・佐藤 純・中易千早・石原 守・福井知子・廣瀬和彦
 ブリ類のエラムシ2種Zeuxapta japonicaHeteraxine heterocercaに対するフェバンテル(FBT)の経口投与量および投与日数を検討した。人為感染魚にFBT展着飼料を1日1回投与し,投薬終了3日目に右鰓のエラムシ寄生数を調べて,無投薬対照区の寄生数から駆虫率を算出した。いずれのエラムシ種もFBT 10 mg/kg以上を5日間連続投与した区で95%以上の高い駆虫率を示した。しかし,同じ用法用量でも完全駆虫に至る場合と僅かに寄生が残る場合があり,駆虫効果の度合いは飼育条件や魚の状態によって異なる事が示された。本試験によりFBT 10 mg/kg 5日間の経口投与は養殖ブリ類のエラムシ対策に極めて有効であることが示された。
魚病研究,56(4), 205-211(2021)

ブリ類のエラムシに対するフェバンテルの効果Ⅱ:野外治療試験

白樫 正・西川 智・石井佑治・川上秀昌・今岡慶明・吉井啓亮・佐藤 純・中易千早・石原 守・福井知子・廣瀬和彦
 室内試験により,フェバンテル(FBT) 10 mg/kg魚体重の5日間投与がブリ類のエラムシHeteraxine heterocercaZeuxapta japonicaに有効であることが示されたため,海面生簀での治療試験を実施し,効果の再検証と実用性の評価を行った。ブリもしくはカンパチを2生簀に分け,FBT投薬区と無投薬対照区とした。投薬開始前日と投薬終了3日目に右鰓のエラムシ数を調べたところ,投薬区では顕著な駆虫効果が認められた。供試魚に死亡はなく,投薬による成長や健康への悪影響も見られなかった。これらの結果からFBTの経口投与は養殖ブリ類のエラムシ駆虫法として極めて有効かつ実用的であることが示された。
魚病研究,56(4), 212-215(2021)

血液中の異物を捕食するヒラメMHCクラスⅡ発現細胞の組織分布

倉田 修・宮下素優・和田新平
 血液中の異物を捕食するMHCクラスⅡ発現細胞の組織分布をヒラメにおいて観察した。異物として用いたカーボン粒子を尾柄部血管内に注入した。3時間後,カーボン粒子は脾臓および腎臓で検出され,エリプソイド,脾索,尿細管周囲の類洞および腎臓内の静脈に存在しているMHCクラスⅡ発現細胞により捕食されていた。カーボン粒子を捕食した細胞におけるMHCクラスⅡ発現細胞の割合は腎臓より脾臓で有意に高かった。以上より,脾臓は血液中の異物の捕食と免疫応答における抗原提示を担う主な器官であることが示唆された。
魚病研究,56(4), 216-219(2021)