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第48巻 3号

養殖マダイのCaligus sclerotinosus寄生例および成虫の魚間移動における走光性の関与

田中真二・山本真二・小川和夫
 養殖マダイのCaligus sclerotinosus寄生例を調査するとともに,成虫の走光性を実験的に調べた。寄生は4-12月に発生し,病魚には最大約500虫体が眼球,各鰭を含む体表全体に寄生していた。主な症状は脱鱗,体表の擦れ,潰瘍および鰭先端部欠損で,水面付近での緩慢遊泳もみられた。日間死亡率は概ね0.1%以下であった。成虫の多くは正の走光性を示し,50 mmol/m2/sの光を照射された虫体は200,800 mmol/m2/sの光条件下より有意に速く遊泳した。水槽内の寄生魚に一方から光を照射したところ,成虫の2.5%が魚から照射側の壁に移動した。水槽中央を網で仕切り,寄生魚と非寄生魚を収容し片側のみ光を照射した実験では,25%の成虫が非照射側の魚から照射側の魚へ移動したが,その逆は認められず,成虫の魚間移動は光条件に影響されることが示された。
魚病研究,48(3), 75-80(2013)

養殖カワハギにおけるStreptococcus iniaeおよびLactococcus garvieaeの病原性ならびにこれら細菌に対する不活化ワクチンの有効性

南 隆之・金丸昌慎・岩田一夫・桑原正和
天野健一・水田 篤・前田修大
西木一生・津江佑哉・吉田照豊
 Streptococcus iniaeおよびLactococcus garvieaeのカワハギに対する病原性について注射感染法で検討した結果,両者とも強い病原性を持つことが明らかになった。また,これら2つの細菌について,他魚種用に市販されているワクチンのカワハギへの有効性を検討した結果,それぞれ高い予防効果があることが分かった。さらにこれら2種のレンサ球菌症ワクチンを等量混合した2種混合ワクチンは,カワハギのどちらの感染症に対しても高い予防効果を示した。
魚病研究,48(3), 81-87(2013)

養殖ヤイトハタに発生した粘液胞子虫性やせ病

知名真智子・中村博幸・濱川 薫・玉城英信
三輪 理・孟  飛・横山 博
 2008年,水温が21~26℃に低下する冬期に,沖縄県内のヤイトハタ養殖場で粘液胞子虫性やせ病が発生した。病魚は著しいやせ症,緑肝および腸管壁の薄化を呈し,累積死亡率は20~50%に達した。形態観察と遺伝子解析により病原体はEnteromyxum leeiであることが示された。E. leeiは病魚の腸管と胆管の上皮に重篤に寄生しており,それに伴う上皮の剥離や激しい炎症が観察された。崩壊した組織と細菌が胆管を閉塞し胆汁の分泌が阻害された結果,肝臓内に胆汁色素がうっ滞し緑肝が生じたと考えられた。生残魚は高水温期(27~30℃)に症状が軽減し,E. leeiが検出されなくなった。病魚との同居ないし病魚の糞の経口投与により,魚から魚への水平感染が成立した。
魚病研究,48(3), 88-96(2013)

サケ科親魚体腔内におけるFlavobacterium psychrophilumおよびRenibacterium salmoninarumの卵内感染の可能性は低い

小原昌和・笠井久会・吉水 守
 排卵期のニジマスおよびアマゴ親魚体腔内における卵内感染の有無を確かめるために,ニジマスの体腔液と未受精卵のF. psychrophilumアマゴの体腔液と未受精卵のR. salmoninarum汚染を調べた。ニジマス体腔液中のF. psychrophilum生菌数は101.0-4.2 CFU/mLであり,アマゴ体腔液中のR. salmoninarum生菌数は101.6-9.9 CFU/mLであったが,卵内から両細菌は分離されなかった。このことから,従来疑われていたサケ科親魚の体腔内卵内感染が起きている可能性は低いと考えられた。
魚病研究,48(3), 97-100(2013)

チュニジアでヨーロッパヘダイ病魚から分離されたリンホシスチスウイルス

S. Haddad-Boubaker・N. Bouzgarou・E. Fakhfakh
M. Khayech・S. B. Mohamed・A. Megdich
N. B. Chéhida
 2011年にチュニジアの地中海沿岸の2養殖場で飼育されていたヨーロッパヘダイSparus aurataにリンホシスチス病(LCD)の症状を呈して大量死亡する事例が発生した。病魚の体表患部,内臓,眼および脳からリンホシスチスウイルス(LCDV)がBF-2 細胞により分離され,またPCRによりLCDVポリメラーゼ遺伝子が検出されたことから本死亡事例へのLCDの関与が示唆された。主要外被タンパク質遺伝子(MCP)のアミノ酸配列の解析から,分離株2株は既報の主としてヨーロッパヘダイからの分離株で構成される遺伝子型VIIと高い相同性を示し(98.3%以上),地中海,紅海およびヨーロッパ大西洋南部海域から分離された9株と一致した。本報告はチュニジアにおけるLCDによると考えられる大量死に関する最初の報告である。
魚病研究,48(3), 101-104(2013)

養殖アユの胸部の穴あき症状を伴う死亡事例

岡村貴司
 2012年6月に滋賀県下のアユ養殖場で,胸部に潰瘍から穴あき症状を呈して死亡する症例が見られた。細菌学的検査により,胸部体表患部と腎臓からFlavobacterium psychrophilumが分離されたことから,本事例は冷水病と判断されたが,これまでに胸部にのみ穴あき症状を呈する冷水病の死亡事例についての報告はない。そこで,予め微細な傷を胸部体表に付けてF. psychrophilumに浸漬感染させた結果,胸部に穴あき症状が再現され,累積死亡率は胸部に傷を付けた区の方が無処理区よりも有意に高くなった。一方,F. psychrophilumに浸漬感染させた後に,研磨シートを敷き詰めた水槽内で高密度飼育した場合には穴あき症状は再現されなかった。よって,胸部の傷がこの病徴につながることは明らかであるが,養殖場での飼育条件でこの病徴を起こす要因を確定し得なかった。
魚病研究,48(3), 105-109(2013)