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第56巻 3号

ニシキゴイの潜水病に関する予備研究

安本信哉・岡田 理・師井秀彰・清水寛貴・近藤昌和
 ニシキゴイ養殖では,コイが池底に沈んで動かなくなる潜水病と呼ばれる疾患が問題となっている。本病は基本的に外見症状がなく,一部の個体に池底とのスレにより生じたと思われる潰瘍および糜爛がみられるのみである。また,解剖所見では鰾に液体(鰾水)が充満しており,病魚14尾中6尾の鰾水から1~3菌種が分離された。病理組織学的には鰾内膜の増生や炎症性細胞の浸潤がみられた。本病を再現するため,分離された3菌種の生菌液およびホルマリン死菌液,ろ過滅菌鰾水を用いて2回の人為感染(鰾内接種)を試みたところ,生菌液を接種した魚は水槽の底で動かなくなり,鰾水の貯留が認められた。よって,本病の主な原因は鰾への細菌侵入による鰾水貯留であり,病魚はこの影響で浮力を失い,池や水槽の底で動かなくなると判断した。
魚病研究,56(3), 107-114(2021)

人工飼育マツカワに外部寄生するトリコジナ科繊毛虫Trichodina hokkaidoensis n. sp.の形態学的及び分子系統学的解析

水野伸也・松田泰平・西川翔太郎・伊藤慎悟
 北海道では,人工飼育マツカワ体表にトリコジナ科繊毛虫が寄生し損傷を与える。本研究では,この繊毛虫を同定するため,形態観察及び分子系統解析を行った。歯状体等の形態観察から,本虫は同科の10属のうち,トリコジナ属に属することがわかった。本虫の歯状体にある3つの特徴から,類似した同属他種と本虫は明確に区別された。分子系統解析の結果,マツカワ寄生種は1種から成ることがわかり,Trichodina pectenisと系統樹の末端節で単一のクレードを形成した。しかし,データベース上に本虫と一致する配列はなかった。以上の結果から,本種を新種Trichodina hokkaidoensis n. sp.として提案する。
魚病研究,56(3), 115-121(2021)

スジアラ人工種苗に寄生するハダムシBenedenia akajinの生物学的特性と病害性

水落裕貴・藤原悠太郎・白樫 正・藤倉佑治・小川和夫
 最近新種記載されたスジアラのハダムシBenedenia akajinについて,年間の寄生状況,成長,産卵,寄生部位および宿主への病害性を調べた。本種は25°C以上の高水温期に多く発生し,26°Cでは9日程度で成熟サイズに達し,およそ1ヶ月間生存することが示された。同水温下では最多で約2分に1個の割合で産卵したが,産卵頻度は虫体サイズに比例して増加した。本種は宿主の各鰭に特に多く寄生し,被寄生魚の鰭には欠損や潰瘍が認められた。宿主の肥満度と寄生数には負の相関があったことから,本種がスジアラ稚魚の成長阻害要因となることが示された。
魚病研究,56(3), 122-129(2021)

滋賀県の養殖ニジマスで見られた新しい微胞子虫症および魚への伝播におけるスジエビの関与

山本充孝・白樫 正・浅井七望・柳田哲矢・菅原和宏・横山 博
 滋賀県下の養鱒場でスジエビを与えたニジマスにおいて,皮下体側筋に赤斑を呈する微胞子虫症が発生した。胞子の顕微鏡観察と遺伝子解析の結果,原因体は武田微胞子虫Kabatana takedaiの近縁種であることが示された。本症の発生にはスジエビの関与が疑われたため,ニジマスとビワマスに対し,琵琶湖産スジエビを餌料とした投与実験を行った。その結果,活または冷蔵エビを投与した群で本症が再現され,感染魚の死亡もみられた。一方,冷凍エビの投与では感染はみられなかった。本研究により,マス類はスジエビを介して本微胞子虫に感染することが強く示唆された。
魚病研究,56(3), 130-139(2021)

天然クサフグとシロギスのKudoa septempunctata寄生

白樫 正・申 相弼・米加田 徹・桐生郁也
 粘液胞子虫Kudoa septempunctataは食中毒の原因体として水産業上重要な寄生虫である。本種は一般的にヒラメの寄生虫として認識されているが,生活環など生態については殆どわかっておらず,宿主範囲も明らかでない。本種が確認されている海域で天然魚を調査したところ,クサフグとシロギスの体側筋にクドア属粘液胞子虫の寄生がみられ,形態学,分子生物学および組織学的検査の結果K. septempunctataと同定した。クサフグの寄生率は最大92.3%とシロギスより高く,体側筋中の胞子密度も高い傾向にあった。しかし,両魚種ともに胞子密度は最大でも7×104個/gと食中毒を引き起こすとされる1×106個/gよりも顕著に少なかった。これらの結果から,本種はヒラメ以外にも寄生する比較的宿主範囲が広い種であることが示された。
魚病研究,56(3), 140-148(2021)

ヒラメエドワジエラ症組み換えサブユニットワクチンにおけるペプチドグリカンおよびpolyICの添加効果

近藤秀裕・菊本辰善・吉井啓亮・村瀬直哉・山田英俊・福田 穣・廣野育生
 ペプチドグリカン(PGN)およびポリIC(IC)をEdwardsiella tardaGAPDH組み換えタンパク質(Rec)と組み合わせ,ヒラメのエドワジエラ症に対する感染防御効果を調べた。Recに,PGNおよびICをそれぞれ混合して接種(Rec+PGN区およびRec+IC区)すると,PBS注射区と比べてIL-1βおよびIFN-γ mRNA蓄積量が上昇した。また,Rec+IC区でのみ,I型IFN mRNA量が上昇した。抗体価は,全ての実験区で上昇したが,Rec+PGN区はRec区よりもわずかに高く,Rec+IC群はRec群よりも低い値を示した。感染試験後,Rec+IC区はPBS区よりも高い生存率を示したが,RecおよびRec+PGN区の生存率はPBS区よりも低かった。これらの結果から,ICは細胞内細菌感染症のアジュバント候補となることが示唆された。
魚病研究,56(3), 149-155(2021)