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第56巻 2号

北関東地域で分離された伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)の遺伝的系統の変遷

難波亜紀・水上 海・武江太郎・椎橋かおり・杉野御祐・安田秋太・竹内久登・石川孝典・松原利光・新井 肇・中西照幸・間野伸宏
 本研究では,北関東地域で1981~2015年にサケ科魚類の病魚から分離・保存されていた伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)72株を収集し,Glycoprotein 遺伝子の全長配列を決定して分子系統解析を実施した。その結果,J genogroupに今まで知られていた2つの系統(静岡系統[JS]および長野系統[JN])に加え,新たな1つの系統(Jnk)を見出した。1980年代のほとんどの分離株ではJS系統が優占していたのに対し,2000年以降の多くの分離株はJN系統であった。また,Jnk系統の分離株は2つのグループに分けられ,一方のグループでは2010年以降の分離株が多かった。北関東地域の養殖場で認められるIHNウイルスの遺伝的多様性の増加は,同地域内における魚の取引形態の変化によって生じてきたものと推測される。
魚病研究,56(2), 35-42(2021)

伊予灘のマダイに寄生する等脚類タイノエと単生類コリコチレの寄生状況

大谷智通・河本 泉・千葉眞佐光・黒野憲之・松岡 学・小川和夫
 愛媛県伊予灘で2003年から2007年に漁獲されたマダイ4,623尾におけるタイノエの寄生状況を調査した。タイノエはほぼ例外なく雌雄1対でマダイの口腔壁に寄生していた。寄生は0歳魚からみられ,宿主の成長とともにタイノエも成長した。5歳魚までは寄生率12.2~21.2%で推移したが,6歳魚では3.4%,7歳魚以上では寄生は見られなかった。以上のことから,タイノエは宿主が0歳の時に寄生し,寿命は最長6年と推定された。タイノエの雌が寄生した上顎骨に変形がみられ,成長は遅れたが,宿主は死亡させないことが示唆された。タイノエの腹尾節上にしばしば単生類Choricotyle elongataが超寄生していた。タイノエが寄生したマダイの方が非寄生マダイよりも単生類の寄生率が高く,寄生数も多かった。
魚病研究,56(2), 43-52(2021)

リアルタイムPCR法およびリアルタイムLAMP法によるべこ病原因微胞子虫Microsporidium seriolaeの検出

米加田 徹・佐藤 純・中易千早・石井佑治・原川翔伍・川上秀昌・柳 宗悦
 べこ病は古くから西日本各地のブリ類養殖で問題となっている疾病である。軽度であれば自然治癒するが,近年,重症化する事例が相次いで報告され,稚魚の斃死あるいはシスト残存による商品価値の低下などの経済的損失を招いている。本病の検出法としては,PCR法が報告されているが,より高感度かつ迅速な診断を行うために,リアルタイムPCR法およびLAMP法の構築を行った。シストの遺伝子解析により得られた塩基配列を基に各検査法の標的領域を選択した。リアルタイムPCR法は高感度で迅速に,LAMP法は極めて迅速に標的遺伝子を検出可能であることが確認された。
魚病研究,56(2), 53-61(2021)

ブリ類のべこ病治療薬の探索

柳 宗悦・佐藤 純・米加田 徹・坂井貴光・川上秀昌・原川翔伍・白樫 正・浜野祥吾・福留 慶・和田和彦・山崎雅俊・西岡豊弘・中易千早・森 広一郎
 ブリ類のべこ病は生活環など不明な点も多く,未だ効果的な治療法はない。そこでべこ病の治療法を確立するため,Microsporidium seriolaeに感染したブリ類稚魚に対し,フェバンテル他8薬剤を用いた投薬試験を行い,体側筋中のシストの有無と原因虫の遺伝子検出により治療効果の有効性を評価した。その結果,感染初期にフェバンテルを投与した魚で,シスト形成率および遺伝子検出率が有意に低く,本薬がべこ病原因虫のシスト形成や体側筋中での増殖を抑制することが示された。一方で,既にシストが高い割合で形成された罹患魚群の本薬投与試験では,顕著な治療効果は認められなかった。以上から,シストが形成される前の感染初期に本薬を経口投与すればシストの形成を抑えられることが明らかとなった。
魚病研究,56(2), 62-70(2021)

ブリ属魚類のべこ病に対する野外でのフェバンテルの効果

川上秀昌・石井佑治・中島兼太郎・柳 宗悦・佐藤 純
 ブリ属魚類のべこ病に対するフェバンテル(FBT)の経口投与による効果を養殖場での野外試験により調べた。日間投与量 1~10 mg/kg bwのFBTをシスト形成前のブリ稚魚に5日間連続投与した結果,10 mg/kg bw投与区において,死亡率,シスト検出率,シスト数およびM. seriolae遺伝子量が対照区と比較して有意に減少した。また,カンパチへ同濃度を5日間投与した場合も,ブリと同様にシスト検出率等が有意に減少した。FBT 10 mg/kg bwを5日間投与,2日間休薬を1クールとして15回の反復投与を行った結果,シスト形成が完全に抑制された。以上のことから,FBT濃度 10 mg/kg bwの5日間投与により,べこ病のシスト形成が大幅に軽減され,さらに反復投与により発症を完全に防げることが示された。
魚病研究,56(2), 71-78(2021)

ブリに対するフェバンテルの毒性

白樫 正・三輪 理・甲木琢也・原川翔伍・川上秀昌・中易千早・森 広一郎
 最近フェバンテル(FBT)の経口投与がブリ類のべこ病治療に有効であることが示されたため,ブリに対する本剤の毒性を検証した。FBT200もしくは 1,000 mg/kg/dayを毎日強制経口投与したブリ稚魚では経口投与6日目以降,50 mgおよび 100 mg投与区では14日以降に死亡が急増した。また,50 mg以上の投与で成長阻害および体色の黒化がみられた。その他にFBT投与による顕著な外観的異常はなかった。組織観察では 20 m以上を5日以上投与した魚の脳と肝臓の細胞に変化が認められたが,休薬後にはみられず可逆的なものと思われた。FBT15 mgを20日間もしくは 20 mgを14日間投与したブリでは死亡や成長阻害はなかった。これらの結果から,高濃度のFBTを長期間連続投与すると致死性の毒性があるが,べこ病治療に有効な用法用量であれば魚への影響は僅少なことが示された。
魚病研究,56(2), 79-88(2021)

ブリ類におけるべこ病の初期感染動態

柳 宗悦・佐藤 純・今岡慶明・川上秀昌・原川翔伍・米加田 徹・中易千早・森 広一郎
 海面生簀で飼育されているブリおよびカンパチの体側筋中におけるMicrosporidium seriolae遺伝子とシストの出現状況を調査し,べこ病の初期感染動態を観察した。また,飼育海域海水中のM. seriolae遺伝子量の変化もモニタリングした。その結果,過去にべこ病の発生が確認された海域では,生簀周辺の海水から102~103 copies/L程度のM. seriolae遺伝子が継続して検出される時に種苗を導入すると,ブリでは約2週間で体側筋中にM. seriolae遺伝子が検出され,その後約1週間でシスト形成に至ることが判明した。また,M. seriolaeの感染は,冬季(11月から1月)でもブリとカンパチで確認され,感染時期がこれまで考えられていたよりも長いことが明らかとなった。一方,カンパチはブリに比べ本症の感受性が高い傾向が窺われた。
魚病研究,56(2), 89-96(2021)

ブリ稚魚におけるフェバンテルの残留性と血液性状への影響

白樫 正・浅井七望・佐藤 純・中易千早
 ブリ稚魚におけるフェバンテル(FBT)とその代謝物の残留を調べた。魚体重 1 kgあたり 20 mgのフェバンテルを5日間強制投与したブリでは投与後1日目でもFBTは検出されなかったが,微量な代謝物が投与後7日目の肝臓と腎臓に残留していた。いずれの薬剤も投与後14日目には検出されなかった。また,FBT量 20 mg/kg含有餌料を5日間与えたブリでは対照区と比較して血漿ビルリビン値は有意に高く,トリグリセライド値は有意に低かった。また,投与後7日目の血漿クレアチニンレベルは低かった。しかし,これらは重大な病的異常を示すものではないと考えられた。
魚病研究,56(2), 97-100(2021)