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第56巻 1号

口白症に罹患したフグの脳に特異的に出現するRNA:口白症の分子診断ツール

加藤毅士・北村万佑香・前田知己・小髙智之・ 瀧澤文雄・末武弘章・一色 正・宮台俊明
 トラフグの口白症はRNAウイルスによる感染性疾患であるとされている。Rapid Determination System for Viral RNA Sequence法を用いて口白症ウイルスゲノムのcDNAクローニングを試みたところ,口白症罹患脳から抽出したRNAを用いて各約 1,000 ntの3つのcDNAを得た。口白症特異的に発現するこれらのRNA(kuchijirosho-associated RNAs: KARs)は脳に大量に存在していた。口白症の実験感染においては,脳内KARsは感染1~2日後に検出され,死に至るまで急速に増加した。KARsの塩基配列は,ウイルスを含む他の生物と相同性を持たなかったため,口白症ウイルスがどの分類群に属するかは不明であった。しかし,KARsは口白症の分子診断には十分に有効であると考えられた。
魚病研究,56(1), 6-13(2021)

体表面の膨隆や出血症状を示すアユから分離されたAeromonas hydrophilaの性状および病原性

永井崇裕
 2017年8月に広島県の養殖場において,細菌性冷水病に似た体表面の出血症状を示すアユの大量死が発生した。検査した全ての死亡魚の腎臓や体表出血部の筋肉から,運動性エロモナス症原因細菌であるA. hydrophilaが分離された。分離菌株の生化学的性状や薬剤感受性は,既報のアユ分離株と大部分が一致したが,病魚の症状は過去の事例と異なった。19および24°Cの飼育水で人為感染実験を実施したところ,両水温ともに症状を示さない状態で死亡魚が見られ,24°Cではより高い病原性が認められた。本結果は,本症例の病原体はA. hydrophilaであり,細菌性冷水病対策として昇温治療が実施されていた場合,被害がより大きくなっていたことを示唆している。
魚病研究,56(1), 14-17(2021)

PCRによるAbalone asfa-like virusの検出に適した検体採取部位の検証

松山知正・桐生郁也・稲田真理・中易千早
 アワビの筋萎縮症の病原体と推定されたAbalone asfa-like virus(AbALV)の既報の定量PCR法を用いて,クロアワビ病貝の各種組織におけるウイルス遺伝子量を測定した。AbALV遺伝子は頭部,鰓,腸管,腹足筋に多く,血リンパ液では少なかった。体表粘液からも腹足筋と同等の感度でAbALVが検出されたが,糞や飼育槽壁面では検出率が低かった。なお,通常のPCRでも病貝の筋肉や体表粘液からAbALV遺伝子を検出できたことから,本研究で検証した定量PCRおよびPCRは,破壊試験によるAbALVの検出では軟体部などいずれの部位でも,非破壊試験では体表粘液からAbALVの検出が可能であった。
魚病研究,56(1), 18-21(2021)

新たに樹立したマハタ由来細胞の神経壊死症ウイルス(NNV)感受性と産生性

桂 賢貞・李ハンソル・西澤豊彦
 Nervous necrosis virus(NNV)の粒子表面突起に存在する細胞レセプター結合部位の解析・同定には,NNV感染を許容する複数の細胞株が必要である。本研究では,マハタの発眼卵胚,同成魚鰭および脳組織の初代培養を行い,新たに4種類のマハタ由来細胞(SeGE-12, SeGE-22, SeGF, SeGB)を樹立した。これらの細胞株の最適増殖温度は何れも約30°Cであった。SeGE-12細胞およびSeGE-22細胞の増殖温度域は25°C-32°Cだったが,SeGF細胞およびSeGB細胞の増殖温度域は15°C-32°Cであった。また,何れの細胞もNNV感染による細胞変性効果(CPE)を示さなかったが,NNV接種後14日までに 102.8~104.7 TCID50/mLのNNVが上清中に放出されたことから,NNV感染許容細胞と考えられた。これらの細胞は,NNVにおけるレセプター結合部位の解析・同定に有用であろう。
魚病研究,56(1), 22-25(2021)