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第55巻 4号

スジアラに寄生していたハダムシBenedenia akajin n. sp.

小川和夫・水落裕貴・山口智史・白樫 正・浅井七望・阿川泰夫
 沖縄県で養成していたスジアラにハダムシの寄生があった。形態観察の結果,本種をBenedenia属に分類した。膣管の開口部から3分の1が硬化した管であること,陰茎先端が乳首形であること,精巣が卵巣より小さいことで本種は同属他種と区別され,Benedenia akajinとして新種記載した。固着盤の鉤やその付属物は重要な分類形質であるが,虫体の成長とともに大型化することが示された。28Sリボソーム遺伝子配列の解析の結果,本種はB. epinepheliB. sargocentronと近縁であったが,データベース上に一致する配列はなかった。これらの結果から,本種は未記載種のハダムシであることが示され,スジアラの健全な養殖のためには防除対策等,本種についてさらなる研究が必要であると思われる。
魚病研究,55(4), 117-124(2021)

バナメイエビに 5-アミノレブリン酸を給餌することによる免疫関連遺伝子発現と急性肝膵臓壊死症に対する防御効果について

S. Direkbusarakom・H. Kinoshita・C. Pooljun・S. Saeng-ngern・S. Wuthisuthimethavee
5-アミノレブリン酸(5-ALA)は,内因性の非タンパク性アミノ酸であり,医学,薬局製品,農業,水産養殖で使用されている。本研究ではバナメイエビに 5-ALAを添加した餌を与えた場合の免疫反応およびVibrio paraheamolyticusによる急性肝膵臓壊死症に対する防御効果を調べた。給餌は15日間と30日間で,給餌濃度は 15 ppmと 30 ppmで行った。抗リポ多糖因子,クラスチンおよびペナイジン3免疫遺伝子は,給餌15日および30日後,発現レベルが増加した。V. parahaemolyticus感染試験では,死亡率が対照区に比べて低くなった。これらのことより5-ALA給餌が,抗病性を高めることを示した。
魚病研究,55(4), 125-131(2021)

性成熟に伴うアユの細菌性冷水病に対する耐病性および白血球組成の変化

河島奈悠・南 俊伍・鈴木究真・渡辺 峻・中易千早・佐野元彦・加藤豪司
 本研究では,電照飼育により成熟を抑制したアユ(LP)および自然日長で飼育したアユ(ND)の細菌性冷水病に対する耐病性と白血球組成を比較した。Flavobacterium psychrophilumによる攻撃試験では,LP区の累積生存率(90%)はND区(0%)よりも高くなった。電照飼育開始前の魚(IN)と比較すると,ND区のIgM,IgD,CD3εおよびTCRβ遺伝子発現レベルは有意に減少した。In situ hybridizationでは,IgMおよびCD8α mRNA陽性細胞がND区で減少することがわかった。また,ND区のBリンパ球の割合はLP区と比較して有意に少ないことがフローサイトメトリー解析により示された。以上のことから,産卵期のアユは性成熟によりリンパ球数が減少し,細菌性冷水病に対する耐病性も低下することが示唆された。
魚病研究,55(4), 132-141(2021)

天然アユの肝臓にみられたCucullanidae科幼線虫の寄生

岡本 満・沖野 晃・Mark A. Freeman・小川和夫
 本州日本海側西部の河川で採捕されたアユの肝臓に直径 0.43~1.57 mmの白色のシスト様構造物が多数見つかった。内部には体長約 1 mmの線虫が1~2個体,まれに3個体含まれていた。2008年~2013年に調査した6水系のうち3水系のアユに感染が確認された。寄生率は0~100%,シスト数は1~837とばらつきが大きかった。無感染の人工種苗アユが放流後に感染したことから,感染は河川で起きたと推察された。アユ漁獲後24時間は,線虫はシスト内でほとんど動かなかったが,生理食塩水に暴露した瞬間に激しく運動した。生理食塩水中では22~25°Cで81時間生存したが,37°Cで12時間以内,80°Cで1分以内に死滅した。本線虫は形態学的に第3期幼虫と思われた。18S rRNA領域を利用した系統解析では本虫はCucullanus属またはDichelyne属に分類されると考えられた。終宿主は淡水魚と推定されるが,生活環は不明である。
魚病研究,55(4), 142-150(2021)

免疫組織染色によるヒラメMHCクラスⅡ発現細胞の検出

倉田 修・宮下素優・戸田宗生・和田新平・坂井貴光
 MHCクラスⅡ分子を発現する抗原提示細胞はリンパ組織においてヘルパーT細胞の分化および活性化を誘導する。今回,ヒラメ組織内におけるMHCⅡ発現細胞の検出を目的とした免疫組織染色法の開発を試みた。初めに,ヒラメMHCⅡα2 領域のアミノ酸配列をもとに合成したペプチド抗原に対する抗体を作製した。本抗体はα2 領域の組換えタンパク質,脾臓より抽出した可溶性タンパク質および腹腔内浸潤細胞の細胞膜タンパク質におけるMHCⅡα鎖分子に反応した。免疫組織染色では,パラフィン切片標本上のMHCⅡ発現細胞を検出することに成功した。MHCⅡ発現細胞は,脾臓,腎臓,胸腺,腸,胃,肝臓,心臓,鰓,皮膚,嗅覚器および脳に存在した。これらの細胞は細長い不定形または円型であった。MHCⅡ発現細胞の形態および組織分布から,これらは樹状細胞,マクロファージ,B細胞,ミクログリアおよび上皮細胞など今まで抗原提示細胞と考えられている細胞と推定された。
魚病研究,55(4), 151-161(2021)

モノアラガイ中の吸虫Clinostomum complanatum セルカリアの季節性及び感染キンギョにおける投薬効果

荒川純平・鈴木航太・石井 亮
 愛知県内のキンギョ養殖場にけるモノアラガイ中のClinostomum complanatumセルカリア検出率は7月前後に高かった。キンギョに人為的に寄生させたC. complanatumに対するトリクロルホン及びプラジクアンテルの効果を検証したところ,C. complanatumが寄生したモノアラガイと同居させたキンギョにおいて,どちらの薬品にも寄生初期における駆虫効果が確認された。トリクロルホンは 300 mg/t,13日間の薬浴で,プラジクアンテルは 138 mg/kg魚体重の経口投与で効果が確認された。魚への寄生が多く起きる7月前後にトリクロルホン薬浴またはプラジクアンテル経口投与を行うことで,寄生虫の脱嚢が原因となる魚体への損傷を回避し,魚体に損傷を与えずに C. complanatumの被害を軽減できる可能性が示された。
魚病研究,55(4), 162-165(2021)