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第55巻 3号

ウグイ種苗の腹腔にみられたメタセルカリアの重篤寄生

小松典彦・伊藤直樹・小川和夫
 2013年に長野県水産試験場佐久支場で生産したウグイ種苗の腹部が顕著に膨満する事例が認められた。ウグイの腹腔にはDiplostomidae科の吸虫と考えられる被嚢を持つメタセルカリアが多数寄生しており,最も重篤な事例では1尾あたりの寄生数が66虫体(平均34.3虫体)に達した。病魚の組織観察では,メタセルカリアの多くは死虫であったことから,ウグイは本吸虫の好適宿主でない可能性がある。同試験場内で第一中間宿主と考えられる淡水性巻貝類を調査したが,Diplostomidae科のセルカリアは認められなかった。ウグイから得たメタセルカリアのリボソームおよびミトコンドリア遺伝子を解析し,暫定的にPosthodiplostomum属に分類したが,種の同定には至らなかった。プラジクアンテルの経口投与試験を実施した結果,殺虫効果があることが分かった。
魚病研究,55(3), 53-60(2020)

北海道内の飼育及び野生サケ科魚類に寄生する腸管鞭毛虫Spironucleus salmonisの定量解析

水野伸也・浦和茂彦・勝又義友・森下 匠・箕輪ゆい・伴 真俊
 北海道内の孵化場産サケ及びサクラマス稚魚において,腸管鞭毛虫S. salmonisの寄生が報告されている。本研究は,原因虫のリボゾームRNA遺伝子(rDNA)を標的とした定量PCR系(qPCR)を確立し,孵化場,養殖場及び野生のサケ科魚類に寄生するS. salmonisの定量解析を行った。確立したqPCRは,1~1.0×108copies/μLの範囲で測定可能であった。原因虫トロホゾイトの細胞数とrDNAコピー数の間には,正の線形性相関[回帰関数:rDNAコピー数=-768+338×細胞数]がみられた。孵化場3箇所,養殖場1箇所と1河川で,サケ及びサクラマスの稚魚あるいは親魚から,原因虫が検出された。このqPCRの活用により,飼育魚や野生魚でS. salmonisの感染を監視することが可能になった。
魚病研究,55(3), 61-70(2020)

人工アユ2系統に対するFlavobacterium psychrophilumの病原性の違い

永井崇裕・中井敏博
 人工アユ2系統(累代系DSと海産交配系AS)に対するアユ由来F. psychrophilum株の病原性を腹腔内注射および浸漬感染で調べた。いずれの攻撃法でも,供試した18株のうち6株はASよりDSに対して病原性が高く,12株は逆にDSよりASに対して病原性が高かった。DSに対して病原性が高い株をDo病原型,ASに対して病原性が高い株をAm病原型と呼称する。各代表株PH-1034(Do病原型)およびPH-1037(Am病原型)のDSとASに対するLD50(腹腔内注射)は,それぞれ1.4×102と5.0×105および5.9×105と4.6×102CFU/fishであった。病原性と体内での菌の動態との間には密接な関連性が認められたが,本菌の病原因子の一つと考えられる血清での増殖能においては両病原型間で差はなかった。また,供試した18株は既報のPCR-RFLP遺伝子型のいずれかに分類されたが,それらの遺伝子型と病原型には明瞭な関係は見られなかった。

過酸化水素浴がハダムシNeobenedenia girellaeの産卵と孵化に及ぼす影響

平澤徳高・梅田奈央子・秋山孝介
 濃度と時間が異なる過酸化水素水浸漬処理がNeobenedenia girellaeの産卵と虫卵の孵化に与える影響を調べた。成虫もしくは卵を過酸化水素 0 ppm・30分間,300 ppm・3分間,75 ppm・30分間および100ppm・30分間で浸漬処理した。全ての処理区において,処理後4時間以内に成虫が産した虫卵は,形態的に異常なものが対照区と比べ多く,孵化率も低かった。さらに,本剤で浸漬処理した産後24時間以内の虫卵の孵化率は対照区と比較して有意に低下したが,産後48-71時間の卵では対照区と同等の孵化率を示し,卵の発達とともに過酸化水素への耐性が増すことが示唆された。これらの結果は,養殖や種苗生産において本虫を制御する上で有用な知見と考えられた。
魚病研究,55(3), 80-83(2020)

アユのポックスウイルス様ウイルス検出のためのPCR法および定量PCR法の開発

古山朋樹・小松大樹・内野 翼・翠川優希・加藤豪司・石川孝典・西村友宏・武田維倫・福田穎穂・和田新平・佐野元彦
 アユのポックスウイルス様ウイルスPlecoglossus altivelis poxvirus-like virus(PaPV)はアユ養殖に被害をもたらす異型細胞性鰓病(ACGD)の原因ウイルスと考えられている。本研究では,PaPVゲノム中のワクシニアウイルスA16Lの相同遺伝子配列から新たにPCRおよび定量PCRのプライマーを設計した。開発したPCR法では実験に供した8症例全てにおいて病魚鰓が陽性となり,またコイのポックスウイルスcarp edema virusとの交差反応はみられなかった。本法は現行のBOKE30プライマーによるPCRよりも高い検出感度を示した。定量PCR法では病アユ鰓組織1mg中におよそ108-9ウイルスDNAコピーが検出できた。
魚病研究,55(3), 84-87(2020)