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第53巻 2号

スピロヘータ遺伝子を標的としたPCRによるアコヤガイ赤変病の疫学的調査

松山知正・松浦雄太・稲田真理・高野倫一・中易千早・坂井貴光・寺島祥子・安池元重・藤原篤志・中村洋路・土橋靖史・小田原和史・岩永俊介・正岡哲治
 赤変病の病原体と推定されたスピロヘータ門細菌に着目し,病貝のメタゲノムデータからスピロヘータに相同性を示す遺伝子を選抜し,PCRプライマーを設計した。本病発生海域と非発生海域のアコヤガイについてPCRによる本細菌の検出を試みた。6つのプライマーセットでは,発生海域のアコヤガイのみに陽性反応が得られた。発症の目安である閉殻筋の赤色度が3を超える全個体が6つのプライマーセットを用いたPCRに陽性を示し,赤色度とPCRの結果には相関がみられた。本結果は,本病の病原体はスピロヘータとする推定が合理的であることを裏付ける。また,PCR産物の塩基配列の違いは1塩基のみで,本病の病原体の遺伝的多様性は低いと考えられた。
魚病研究,53(2), 63-70(2018)

カキヘルペスウイルス1型(OsHV-1)国内型JPType1 のマガキ幼生および稚貝に対する実験感染

永井崇裕・中森三智
 OsHV-1 国内型の病原性を種苗生産したマガキ幼生および稚貝を用いた感染実験で検討した。ウイルス源にはJPType1 が検出された死亡稚貝を用いた。ウイルス液を段階希釈して幼生の飼育海水に添加したところ,幼生に対する病原性が認められ,D型幼生のウイルス感受性は付着期幼生に比べて高かった。リアルタイムPCR法で定量したウイルスDNA量はD型幼生で最高 1.6 × 108 copies/ng(全DNA量)となった。殻高 1.8~6.1 mmの稚貝を用いた感染実験では,5日間の観察期間中に死亡は見られなかったが,ウイルスDNA量が 6.3 × 105 copies/mg(貝重量)になる群があった。また,生存していた小型稚貝の群では大型の群よりもウイルスDNA量が多い傾向が見られた。このように,OsHV-1 国内型JPType1 の病原性はマガキ幼生および稚貝に対して確認されたが,マガキの成長に伴い低下すると推察された。
魚病研究,53(2), 71-77(2018)

ホタテガイ閉殻筋の膿瘍形成要因と考えられるFrancisella halioticidaの感染

河原未来・金森 誠・G. Meyer・良永知義・伊藤直樹
 商品価値の喪失をもたらすことが問題視されていたホタテガイ閉殻筋に見られる膿瘍の病原体調査を実施した。その結果,Francisella halioticidaが膿瘍部に優占していることが明らかとなり,改変ユーゴン培地を用いることで膿瘍部より本菌が分離された。さらに,特異PCR法より膿瘍部の多くから本菌の遺伝子が検出されたことから,F. halioticida感染のホタテガイ閉殻筋における膿瘍形成への関与が強く疑われた。2017年に北海道南部海域で実施した調査では,生残率および殻長は閉殻筋の膿瘍発生率と強い負の相関を示したことから,F. halioticidaの感染によって生ずると考えられる閉殻筋膿瘍はホタテガイの生産量にも影響することが疑われる。今後は病原性を確認するため,分離菌株を用いた感染実験が必要となる。
魚病研究,53(2), 78-85(2018)

多摩川支流域で認められたアユ死亡に関与する病原性Aeromonas veronii biovar sobria

 2016年7月,多摩川支流域において下顎,体表と腹鰭基部の出血および腹水貯留などの症状を呈するアユ死亡魚が確認された。検査した全ての死亡魚の腎臓からグラム陰性の運動性短桿菌が分離され,Aeromonas veronii biovar sobriaと同定された。今回分離された菌株は,過去に多摩川生息魚から分離されたA. veronii株と生化学的性状や gyrB遺伝子配列が異なっていた。また人為感染試験において,今回分離された株は過去に分離された株より高い死亡率を示した。多摩川支流域で認められた今回のアユの死亡は,過去の分離株とは性状の異なる高病原性A. veronii biovar sobriaにより引き起こされたものと考えられた。
魚病研究,53(2), 86-89(2018)