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第53巻 1号

スクーチカ症の原因繊毛虫Miamiensis avidusの細胞外プロテアーゼの病原性因子としての役割

楢崎幸恵・大林由美子・伊藤沙耶美・村上祥子・宋 準榮・仲山 慶・北村真一
 スクーチカ症の原因虫M. avidusの病原性因子を解明するため,本虫の培養上清から細胞外プロテアーゼを検出し,それらの基質特異性,生細胞および虫体の増殖に与える影響を調べた.その結果,用いた19種類の人工基質のうち5種類が培養上清によって分解された。培養上清を添加した培地内でCHSE-214 細胞を培養したところ,細胞数は対照区と比較して有意に減少した.本虫をCHSE-214 細胞上で培養する際に,セリンおよびシステインプロテアーゼインヒビターを加えたところ,本虫の成長が阻害された.これらの結果から,M. avidusはセリンおよびシステインプロテアーゼを含むプロテアーゼを分泌し,これらの酵素は,宿主細胞の溶解や本虫の増殖に重要な役割を果たすことが示唆された.
魚病研究,53(1), 1-9(2018)

成長に伴うギンブナ組織におけるCD4-1 およびCD8α陽性T細胞の動態

Mohamed A. Khallaf・小川詩乃・戸田秀明・松浦雄太・宮澤龍一郎・中西照幸
 魚類では適切な抗体が無かったために,リンパ器官等における成長に伴うT細胞サブセットの動態は不明であった。そこで,CD4-1 とCD8αに対する抗体を用いて解析した。6ヶ月齢までは,胸腺,頭腎,体腎,脾臓,肝臓,鰓,腸および末梢血において,CD4-1+およびCD8α+ T細胞は成長とともに増加した。CD4-1 およびCD8α両陽性細胞(DP細胞)は胸腺のみに認められ,6ヶ月齢まではCD4-1 とCD8αいずれも発現しない細胞の割合は低下したが,DP細胞の割合は増加した。胸腺と腸を除きCD4-1+ T細胞の割合はCD8α+ T細胞よりも常に高い値を示した。一方,腸においては6ヶ月齢から2歳までCD8α+ T細胞の割合はCD4-1+ T細胞に比べ高かった。脾臓と肝臓では6ヶ月齢以降CD4-1+ T細胞の割合が低下した。
魚病研究,53(1), 10-18(2018)

Lactococcus garvieae菌株による莢膜合成遺伝子群の存在部位の差異

金井欣也・本間利雄・左右田 茜・首藤公宏・杉原志貴
 海産魚由来Ⅰ型L. garvieaeは莢膜の有無によりKG-タイプとKG+タイプに分けられる。研究室保存のL. garvieaeについて継代による血清タイプの変化を調べたところ,KG-からKG+に変化しやすい菌株と変化しにくい菌株が存在した。莢膜合成遺伝子群の存在部位を調べたところ,血清タイプが変化しやすい菌株ではプラスミド(莢膜プラスミド)に,変化しにくい菌株では染色体DNAあるいは染色体DNAとプラスミドの両方に当該遺伝子群が存在することが判明した。本研究で,構造が類似する3種類の莢膜プラスミドと染色体DNA上に 新たな莢膜合成遺伝子群挿入箇所が見つかった。1991年以前に分離された菌株には莢膜プラスミドのみ保有するものが多かった。
魚病研究,53(1), 19-28(2018)

アユ由来Edwardsiella ictaluriの強毒株と弱毒株間におけるタンパク質の比較定量解析

坂井貴光・桑田知宣・武藤義範・高野倫一・湯浅 啓・大迫典久
 E. ictaluriのアユに対する病原因子を同定するため,二次元電気泳動法により強毒株と弱毒株の菌体タンパク質の比較定量解析を行った。アユに対する病原性については,各菌株の腹腔内接種による感染試験で確認した。累積死亡率は,強毒株接種区(1.2 × 107 CFU/fish)で100%,弱毒株接種区(2.2 × 107 CFU/fish)で26.7%であった。二次元電気泳動法の結果,強毒株に多量あるいは特異的なタンパク質のスポットが23個検出された。これらのタンパク質の同定を行ったところ,Ⅲ型分泌装置およびⅥ型分泌装置の関連タンパク質や食細胞内での酸化ストレスに抵抗すると推察されるタンパク質であった。これらの菌体タンパク質は,E. ictaluriのアユに対する病原性に深く関わっている可能性が高い。
魚病研究,53(1), 29-35(2018)

抗非定型Aeromonas salmonicidaモノクローナル抗体のニシキゴイの"新穴あき病"診断への利用

杣本智軌・丸山真平・長澤貴宏・中尾実樹・佐藤巧視・八田 一・佐藤 充・山口(村上)友貴絵・森(木津)久美子・平川由紀・成田宏史
 非定型A. salmonicidaはニシキゴイ養殖において被害を及ぼしている"新穴あき病"の原因菌である。本菌は他の常在菌と比較して増殖が遅いため病魚からの単離が容易ではなく,迅速な検出法の開発が求められている。本研究では本菌を検出するツールとして4種類のモノクローナル抗体(mAb)を作製した。これらmAbは,コイ分離株の非定型A. salmonicida株を認識するがヒラメ分離株や他の細菌に結合しなかった。本菌で攻撃したニシキゴイから,CBB寒天培地による選択とmAbを用いた蛍光抗体法の組み合わせによって迅速に本菌を検出できた。これらのmAbは,"新穴あき病"の診断に利用できる可能性がある。
魚病研究,53(1), 36-39(2018)

不顕性感染したサケ幼魚の長期飼育後の細菌性腎臓病による大量死

鈴木邦夫・水野伸也・勝又義友・三坂尚行・宮本真人・佐々木義隆
 稚魚および受精直後卵の2群を民間ふ化場より移送し,さけます・内水面水産試験場隔離飼育室で10~15ヶ月間飼育した。これらサケ幼魚の2群が細菌性腎臓病(BKD)を発症し死亡した。死亡魚(10.7-71.2 g)はBKD特有の症状を呈し,累積死亡率は死亡確認後146日でそれぞれ56.1%および19.0%となった。Renibacterium salmoninarum特異遺伝子は,nested PCRにより不顕性感染魚,死亡魚ともに調査した8器官のほとんどで検出された。死亡魚では不顕性感染魚に比べ腎臓を含むすべての器官でその遺伝子コピー数が高かった。以上の結果は,不顕性感染魚体中に存在していたR. salmoninarumが全身で増殖し,発症・死亡に至ったことを示唆する。
魚病研究,53(1), 40-43(2018)

昇温処理に伴うクリノストマム属吸虫のメタセルカリア寄生キンギョの大量死

安本信哉・樺山つかさ・近藤昌和・高橋幸則
 2015年9~11月にかけてヘルペスウイルス性造血器壊死症の昇温治療中にキンギョが大量死した。すべての死亡魚にはクリノストマム属吸虫のメタセルカリアが軽度から中度に感染しており,下顎部から腹部にかけて虫体の被嚢には出血や炎症をともなっていた。病理組織観察の結果,メタセルカリアの活性化による脱嚢や周辺組織の壊死・崩壊および炎症性細胞の浸潤が認められた。大量死を再現するためにクリノストマム感染キンギョを20°C,31°C,33°Cおよび35°Cで飼育したところ,それぞれ 0%,5%,40%および100%の死亡がみられた。以上の結果から,クリノストマム感染キンギョの昇温処理が大量死を引き起こしたと判断した。
魚病研究,53(1), 44-47(2018)