ENGLISH


日本魚病学会事務局(2013年1月より)
〒162-0801
東京都新宿区山吹町358-5
アカデミーセンター
TEL:03-5937-5716
FAX:03-3368-2822
E-Mail:jsfp-post@bunken.co.jp
HOME > 魚病研究 > 第52巻 2号

第52巻 2号

エーゲ海ギリシャ沿岸で養殖されているヨーロッパスズキのAeromonas veronii感染症

M. Smyrli・A. Prapas・G. Rigos・C. Kokkari
M. Pavlidis・P. Katharios
 エーゲ海ギリシャ沿岸で養殖されている出荷サイズのヨーロッパスズキに大量死を伴う細菌感染症が認められた。死亡した養殖魚は,病理組織学的に膿瘍と肉芽腫を主徴とする全身性感染症であった。罹病魚より2株を分離し細菌学的検査,16S rRNAおよびgyrB遺伝子解析を行った結果,分離株はA. veronii bv. sobriaに同定された。分離された2株(Aero NS, Aero PDB)を用いヨーロッパスズキに注射感染(Aero NS)および浸漬感染試験(Aero NS, Aero PDB)を行ったところ,養殖場で認められた死亡魚と類似した症状を示した。今回の結果は,A. veronii bv. sobriaがエーゲ海で養殖しているヨーロッパスズキに感染し,病原性を示すことを明らかにした最初の報告である。
魚病研究,52(2), 68-81(2017)

ハギ類由来Lactococcus garvieaeで見つかった莢膜合成遺伝子群を有する新奇プラスミド

金井欣也・辻倉正和・首藤公宏・本間利雄
松本扶規浩・菅 向志郎・高木修作
福田 穣・杉原志貴
 魚類由来L. garvieaeには莢膜を有するKG-と有さないKG+の2つの血清タイプが知られているが,ハギ類由来株は他魚種由来株に比べて容易にKG-からKG+に変化する。養殖カワハギ由来L. garvieae BSLG13015 株の莢膜合成遺伝子群を調べたところ,本遺伝子群が新奇なプラスミド上にあることが分かった。本プラスミドは塩基配列長が 31,654 bpであり,pBSLG13015 と命名された。本プラスミドは,調べたハギ類由来KG-株すべてに存在し,ハギ類由来KG+株や他魚種由来KG-株およびKG+株には認められなかった。ハギ類由来KG-株がKG+タイプに変化しやすいのは,莢膜合成遺伝子群がプラスミド上にあり,プラスミドが脱落するためと考えられた。
魚病研究,52(2), 82-88(2017)

北海道内のサケにおけるBKD原因菌の不顕性感染

鈴木邦夫・三坂尚行・水野伸也・佐々木義隆
 BKD原因菌Renibacterium salmoninarumのmsa遺伝子とそのmRNAを,無症状のサケ稚魚および幼魚を用いて,それぞれの腎臓組織と体表粘液からPCRにより検出した。供試サケ稚魚は2016年の3月~5月に道内の一サケふ化場で採取された。更に,同年3月に同ふ化場からさけます・内水面水産試験場に移送した稚魚を翌年1月まで湧水飼育し腎臓組織を採取した。魚は無症状で,腎臓からR. salmoninarumは分離できなかった。msa遺伝子とmRNAの検出率はそれぞれ0%~100%および0%~70%であり,遺伝子コピー数から予測される腎臓組織 1 mgあたりのゲノム数は1.0 × 101~1.7 × 104コピーであった。2016年11月と翌年1月に採取した体表粘液の検出結果は腎臓と同程度であった。結果は道内のサケ稚魚にR. salmoninarumが不顕性感染していることを示した。
魚病研究,52(2), 89-95(2017)

組織透明化試薬による魚類組織の透明化と魚類感染症の3D病理解析

大沼史門・片桐孝之・舞田正志
延東 真・二見邦彦
 魚類感染症の診断に用いられてきた従来の手法は,病原体や病巣を網羅的に検出できているとはいえなかった。そこで,近年開発された3種の組織透明化技術(ClearT,SeeDB, CUBIC)を用いて魚体を組織の深部まで透明化し,病原体や病巣を三次元的に可視化することを試みた。その結果,CUBICが最も高い透明性を示し,免疫染色やGFPのイメージングにも適用可能であった。さらに,DAPIで標識したAeromonas hydrophilaの魚体中での局在も可視化できた。以上の結果から,CUBIC試薬を用いることで,魚類感染症における病原体の局在を三次元レベルで解析できることが明らかとなった。
魚病研究,52(2), 96-99(2017)

北海道内のサケおよびサクラマス親魚体腔液におけるBKD菌のPCRによる検出と定量

鈴木邦夫・三坂尚行・水野伸也・佐々木義隆
 2015年と2016年に北海道の7河川に遡上したサケ(925検体)および3河川に遡上したサクラマス(309検体)の雌親魚体腔液からnested PCR法によりRenibacterium salmoninarumの検出を試みた。さらに,2016年のサンプルについては定量PCR法によりゲノム数の予測も行った。2015年と2016年におけるR. salmoninarumの検出率は,サケではそれぞれ0%~90%および12%~98%であり,サクラマスではそれぞれ0%および50%~84%であった。2016年では前年に比べ10河川のうち8河川で検出率が増加した。定量PCRにより予測されたR. salmoninarumゲノム数は,体腔液 1 μLあたり1.0 × 101~8.0 × 102コピーであった。
魚病研究,52(2), 100-103(2017)

粘液胞子虫性やせ病原因虫の検出に用いるLAMP法の開発

堅田昌英・奥山芳生
 本研究では,粘液胞子虫性やせ病原因虫Enteromyxum leeiおよびSphaerospora fuguを検出するためのLAMP法を開発した。LAMP法のプライマーは,small subunit ribosomal RNA遺伝子領域を標的として設計した。LAMP法の最適な反応時間および反応温度を検討した結果,各原因虫ともに62°Cで60分間の反応を行うことで検出できることが示された。また,他の粘液胞子虫から抽出したDNAとの交差反応は見られず,反応特異性が認められた。さらに,当該LAMP法は,同じ遺伝子を標的としたPCR法よりも100~1,000倍の検出感度を示した。本研究で開発したE. leeiおよびS. fuguのLAMP法による検出系は,本疾病の検出・診断法として実用可能である。
魚病研究,52(2), 104-107(2017)