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第51巻 4号

中国における2つのKHV遺伝子型の初検出

Z. Liu・H. Ke・Y. Ma・L. Hao
J. Ma・Z. Liang・Z. Chen
 中国ではすでにKHVが検出されているが,遺伝子型に関する情報はほとんどない。そこで,すでにduplex PCRに用いられているI/II遺伝子領域に新たにnested-PCRを設計し,この高感度な方法を用いて中国のコイ主要生産地である広東省(2010-2015年)と河南省(2013年)でKHV遺伝子型の調査を行った。その結果,アジア・東南アジア地域の主要な遺伝子型I++ II+および近年報告されているI++ II-とI++ IIの計3つの遺伝子型が検出され,その内,遺伝子型I++ II-が最も優占した。I++ II-とI++ IIの遺伝子型ウイルスの分離にも成功した。この2つの遺伝子型は中国で初めての検出であり,本結果は中国でのKHVの拡散などの疫学上有益な情報となる。
魚病研究,51(4), 169-175(2016)

天然マアジから分離されたベータノダウイルス(SJNNV)の病原性

西岡豊弘・菅谷琢磨・河東康彦
森 広一郎・中井敏博
 漁獲されたマアジの脳または眼からベータノダウイルスSJNNVを12株分離した。このうちの5株とシマアジ仔魚由来のSJNNV基準株(SJNag93)について,種苗生産したシマアジおよびマアジ仔魚に対するそれらの病原性を浸漬感染により調べた。いずれのウイルス株も両魚種に感染性を示したが,死亡魚体内のウイルス感染力価はマアジよりシマアジで高く,また供試マアジ由来5株中の1株はシマアジ仔魚に対して基準株と同等の病原性を示した。しかし,病原性に関与するとされる外被タンパク質遺伝子(RNA2)のT4 領域について塩基配列を系統解析した結果,マアジ分離株は2つのクラスターに分けられ,これらはいずれも基準株のものとは異なった。天然魚中のこのような病原性ウイルスの存在は,本ウイルスの感染環を考える上で重要であろう。
魚病研究,51(4), 176-183(2016)

多摩川におけるアユおよびその他魚種のFlavobacterium psychrophilumおよびEdwardsiella ictaluriの感染状況

竹内久登・平塚元幸・生沼大樹・海野芳幸
中野大輝・岩垂真由・伴野竜次・堀 一智
今井俊宏・石川孝典・難波亜紀・髙井則之龍
岳比呂・前田洋志・中井敏博・間野伸宏
 都市型河川におけるアユやその他魚種のF. psychrophilumおよびE. ictaluriの保菌ならびに発病状況を知るため,多摩川水系において2011と2012年にPCR法と分離培養法による疫学調査を実施した。F. psychrophilumは季節を通じて15魚種から検出され,両年の6月にアユにおいて細菌性冷水病の発生が確認された。一方,E. ictaluriは夏季と晩秋を中心に7魚種から検出され,2012年8月に本菌感染症によるアユの大量死が認められた。2012年8月の平均水温は2011年に比べ約6°C高く,河川の高水温化は本症発生の重要な要因の一つであると考えられた。
魚病研究,51(4), 184-193(2016)

異なる温度で飼育したイシダイでのRSIVの増殖速度

呉 昭映・金 尉植・呉 明柱・西澤豊彦
 異なる温度で飼育したイシダイにRSIVを筋肉内接種し,死亡率と脾臓におけるRSIVの増殖速度について検討した。28°Cおよび26°C接種群では,RSIV接種11日および15日目から死亡が始まり,累積死亡率は92%以上であった。一方,16°C接種群では,RSIVの感染・増殖は認められたが,死亡は殆ど認められなかった。RSIVの増殖速度は28°C接種群で最も速く,飼育温度の低下に伴いRSIVの増殖速度も低下し,RSIVの病毒性と魚の飼育温度およびRSIVの増殖速度に相関が認められた。さらに,11°C接種群では,死亡もRSIVの増殖も認められなかったが,飼育水温が20°Cまで上昇するとRSIVは増殖を始め,高濃度RSIV接種群では78%の魚が死亡した。従って,イシダイが低温でRSIVに感染した場合,長期間持続感染することが示された。なお,11°Cおよび16°C接種群の水温は0.15°C/day上昇し,26°C接種群の水温は0.11°C/day下降した。
魚病研究,51(4), 194-198(2016)

北海道における孵化場産及び野生サケ科魚類に寄生する繊毛虫Trichodina truttaeの疫学研究

水野伸也・浦和茂彦・宮本真人・畑山 誠
實吉隼人・佐々木義隆・小出展久・上田 宏
 外部寄生性繊毛虫トリコジナは,孵化場産サケ稚魚に寄生し,大量死を引き起こす。本研究は,原因虫の疫学情報を得るため,サケ稚魚及び河川の野生魚についてトリコジナの寄生状況調査,種同定及び感染試験を行った。トリコジナの寄生は,調査した87か所のうち28か所の孵化場稚魚と,野生サクラマス,ニジマス,サケ親魚,アメマス,オショロコマに観察された。これらのトリコジナはリボソームRNA小サブユニット遺伝子において全て同一の塩基配列を有し,形態学的にT. truttaeと同定された。感染試験の結果,野生サクラマスからサケ稚魚への水平感染が成立した。以上の結果から,北海道のサケ科魚類に寄生するトリコジナの優占種はT. truttaeであること,孵化場産サケ稚魚への感染源の1つは野生サケ科魚類であることが示された。
魚病研究,51(4), 199-209(2016)

伝染性筋壊死症ウイルス(IMNV)検出のためのPCRプログラムの改良

稲田真理・C. Handayani・河東康彦・米加田 徹
湯浅 啓・三輪 理
 伝染性筋壊死症(IMN)は,バナメイエビにおいて大量死を引き起こし,現在,OIEのリスト疾病に指定されているが,OIEマニュアル(2016)で推奨されている酵素を含むキットは国内では販売されていない。そこで異なるキット(SuperScript® III One-Step RT-PCR System)を用いた原因ウイルスのRT-PCRによる検出条件を検討した。その結果,OIEマニュアル通りのプログラム(60°Cでの逆転写,2ステップ1サイクルのシャトルPCR)より,55°Cでの逆転写,3ステップでのPCRプログラムの方が明らかに検出効率が高く,使用するキットにあわせて変更したPCRプログラムがIMNの診断に有効であることが示された。
魚病研究,51(4), 210-212(2016)