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第49巻 4号

Edwardsiella tardaのGAPDH組換えタンパクおよびその発現ベクターによるワクチネーションはブリのノカルジア症に対して感染防御効果を持たない

今城雅之・田村一樹・大黒司貴・栗原 菫
山根 仁・志水将人・大嶋俊一郎
川合研児
 E. tarda GAPDHはVibrio anguillarum等にも感染防御効果を有する。その組換えタンパク質およびpcDNA4発現ベクターをブリ当歳魚に注射投与してノカルジア症に対する感染防御効果を検証した。各投与群ともに,N. seriolaeの 16S rRNA遺伝子のコピー数の低下と免疫関連遺伝子(CCケモカイン,MHCⅡα,IL-1,IgM)の発現増加が鰓,腎臓および脾臓で有意に認められたが,60日後の生残率は 0~6.7%となり,ワクチネーションによる感染防御効果は認められなかった。E. tarda GAPDHのアミノ酸配列から予測された4つのB細胞エピトープが交差防御免疫に重要であることが示唆されたが,これらはN. seriolae GAPDHのアミノ酸配列から予測されるB細胞エピトープとは配列が大きく異なっていた。
魚病研究,49(4), 151-158(2014)

エビの急性肝膵臓壊死病原因菌Vibrio parahaemolyticusのPCR検査法の開発

S. Tinwongger・P. Proespraiwong・J. Thawonsuwan
P. Sriwanayos・J. Kongkumnerd・T. Chaweepack
R. Mavichak・S. Unajak・野崎玲子
近藤秀裕・廣野育生
 クルマエビ類養殖場で問題となっている急性肝膵臓壊死病(AHPND)の原因菌Vibrio parahaemolyticusは,本症を起こさない菌株との区別が必要で,その正確な検査法の開発が求められている。本研究では,既報の本菌ゲノムデータを基に病原性株特異的に存在するプラスミドを標的とした3種類のPCRプライマー(TUMSAT-Vp1,-Vp2 および-Vp3)を設計し,病原性48株,非病原性38株ならびにV. parahaemolyticus以外の細菌12株の計98株を用いて検出精度を検討した。全てのプライマーで病原性株を検出できたが,TUMSAT-Vp1 および -Vp2 では1株の非病原性株が陽性となった。さらに,Web上で公開されている検出プライマーAP1 およびAP2 でも偽陽性株が存在した。以上の結果より,TUMSAT-Vp3 の検出精度が最も高いことが判明した。
魚病研究,49(4), 159-164(2014)

Nocardia seriolae感染症に対するDNAワクチンの開発

加藤豪司・家戸敬太郎・W. Jirapongpairoj
近藤秀裕・廣野育生
 ノカルジア症の原因菌であるNocardia seriolaeのAntigen 85様遺伝子(Ag85L)を用いたDNAワクチンを開発した。Ag85 遺伝子は結核菌等の主要抗原遺伝子として知られている。Ag85Lおよびコドン使用頻度を最適化したAg85Lをコードした発現プラスミド(pAg85LwtおよびpAg85Lopt)を,カンパチ筋肉内に10μg接種し免疫した。免疫4週間後にN. seriolae生菌の筋肉内接種による感染実験を行ったところ,最終的な生残率はpAg85Lwt区で88%,pAg85Lopt区で98%,およびPBS区で51%となった。また,感染後の脾臓内N. seriolae生菌数はPBS区に比べpAg85LwtおよびpAg85Lopt区で有意に減少していた。本研究によりDNAワクチンpAg85LwtおよびpAg85Loptはノカルジア症に対して感染防御効果をもたらすことが示された。
魚病研究,49(4), 165-172(2014)

アクリジンオレンジを用いたLAMPによる伝染性脾臓腎臓壊死症ウイルス(ISKNV)の検出法

K. Subramaniam・M. Shariff・A. R. Omar
M. Hair-Bejo・B. L. Ong
 核酸増幅技術の発展は多くの疾病に対する診断法を向上させてきた。本研究では,LAMPによる伝染性脾臓腎臓壊死症ウイルス(ISKNV)の検出を検討した。LAMP反応終了後,アクリジンオレンジを添加することにより,肉眼で識別できる色の変化として陽性反応が検出できた。また,ウイルスの主要カプシドタンパク質遺伝子に新たに設計したプライマーセットは,同じウイルス属に属するマダイイリドウイルスと交差性がなくISKNVに特異的に反応した。最適な反応温度・時間は65℃・60分で,検出限界は 1.4×104 DNAコピーであり,不顕性感染した魚からの検出が可能であった。以上のように,本法は特別な機器を必要としない簡便で安価なISKNV検出法である。
魚病研究,49(4), 173-180(2014)

日本産アサリの中腸腺にみられた原虫Marteilia granulaの新種記載

伊藤直樹・山本敏博・H.-S. Kang・K.-S. Choi
T. J. Green・N. Carrasco・淡路雅彦・張 成年
 神奈川県小田和湾より採取したアサリの胃・腸・消化細管および消化盲嚢の上皮細胞内に原虫の感染を認めた。本虫は一次細胞内に8個の二次細胞を含み,各二次細胞内に三細胞性の胞子を4個形成することから,ケルコゾア門Marteilia属に同定された。さらに,胞子の構造やSSU rRNA遺伝子塩基配列において既知種とは明確に異なることから新種であると判断し,Marteilia granula sp. nov.と命名する。調査期間内の病理組織切片観察による感染率は平均8.9%,最高28.6%であった。本虫に関連するとみられるアサリの大量死は確認されていないが,本属は二枚貝の重要病原体を多く含むため,本虫の病原性に関するさらなる調査は必要である。
魚病研究,49(4), 181-193(2014)

鰭はコイヘルペスウイルス病の診断に適用可能である

伊東尚史・開内 洋・湯浅 啓
 コイヘルペスウイルス病(KHVD)の診断のため,簡便に採材できる鰭からcyprinid herpesvirus 3 (CyHV-3) DNAが検出されるかどうか,実験感染魚および自然感染死亡魚を用いて調べた。CyHV-3 KHV0308 株の人為的浸漬感染試験では,全ての感染死亡魚の尾鰭からCyHV-3 DNAが検出され,また,感染後,経時的にサンプリングした魚の尾鰭,鰓,心臓,腸管,脾臓,脳,腎臓および肝膵臓からウイルス DNAを検出した結果,尾鰭の検出率が最も高かった。河川における自然発病による死亡魚では,供試魚(30尾)全ての尾鰭,胸鰭からCyHV-3 DNAが検出された。これらより,鰭はKHVD死亡魚のPCR診断に適用可能であると考えられた。
魚病研究,49(4), 194-197(2014)

日本で内水面養殖されたサケ科魚類における日本海裂頭条虫プレロセルコイドおよびMetagonimus属吸虫メタセルカリアの寄生状況

渡邊長生・澤田守伸・柳田哲矢・小川和夫
 2007年から2009年にかけて国内で内水面養殖されているサケ科魚類を対象として日本海裂頭条虫およびMetagonimus属吸虫メタセルカリアの存否調査を行った。合計9魚種2,187尾の調査を行ったところ,日本海裂頭条虫の寄生は確認されなかった。一方,海から河川に遡上した天然サクラマス60尾中5尾から日本海裂頭条虫のプレロセルコイド幼虫が確認された。また,調査個体からはMetagonimus属吸虫のメタセルカリアは確認されなかった。本研究により,淡水で養殖されているサケ科魚類が日本海裂頭条虫に感染する機会を持たないことを示唆するこれまでの結果を裏付けることができた。
魚病研究,49(4), 198-201(2014)

中国の養殖チャイロマルハタにおける腎臓粘液胞子虫Sphaerospora epinepheli寄生に伴う大量死亡事例

L.-W. Xu・J.-Y. Zhang・J. Feng・J.-G. Wang
 2011年11月,中国広東省の生簀養殖チャイロマルハタに腎臓粘液胞子虫病が発生した。病魚はやせ症,貧血,食欲不振および腎肥大を呈し,脾臓に軽度の腫脹がみられ,しばしば皮膚の潰瘍もみられた。累積死亡率は2週間で50%~80%に達し,その時期の水温は21℃~27℃であった。腎臓尿細管は粘液胞子虫の胞子形成段階のシュードプラスモジアによりほとんど完全に閉塞され,多数の成熟胞子が管腔内に観察された。形態学,病理組織学および遺伝子解析の結果から,大量死の原因体はSphaerospora epinepheliであることが示唆された。これはS. epinepheliの腎臓寄生に伴って発生したと思われる養殖チャイロマルハタ大量死の最初の事例報告である。 魚病研究,49(4), 202-205(2014)

エボヤは被嚢軟化症原因鞭毛虫Azumiobodo hoyamushiのキャリアーになり得る

熊谷 明・酒井敬一・三輪 理
 エボヤにおける,マボヤ被嚢軟化症原因鞭毛虫Azumiobodo hoyamushiの感染の有無を調査した。毎年被嚢軟化症が発生しているマボヤ養殖場から外見上正常なエボヤ48個体を採取し,病原体フリーの海水で50日間飼育した。その結果,飼育期間中に7個体の被嚢が軟化し,これらすべての被嚢からA. hoyamushiが検出された。発病したエボヤの被嚢を浸漬した海水で飼育することによって,健康なマボヤに被嚢軟化症が発病した。これらの結果は,エボヤがA. hoyamushiのキャリアーになり得ることを示している。エボヤは侵略的外来種として知られており,これまでに船底汚損や種カキの移動によって生息域が世界中に広がった。今後,A. hoyamushiがエボヤとともに蔓延し,地場のホヤ類に影響を与える懸念がある。
魚病研究,49(4), 206-209(2014)