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第49巻 2号

アワビの糞を利用したPCR法によるXenohaliotis californiensisの迅速な検出

桐生郁也・西岡豊弘・湯浅 啓・栗田 潤
嶋原佳子・乙竹 充・池上直也・大迫典久
 Xenohaliotis californiensisに感染したアワビの簡易検出法を確立するため,クロアワビとメガイアワビの自然感染群と人為感染群を個体別に飼育して調べた。7日間の期間中に採取した糞と,最終的に解剖して摘出した食道後部(PE)との間でPCRによる本菌の検出感度を比較した。その結果,糞は30-67%の個体が,PEでは17-97%の個体が陽性であった。糞における陽性率は検査日により異なったが,どの群も毎日最低1個体は陽性を示した。糞からの迅速なDNA抽出法を確立するため,熱抽出法とQIAamp® DNA Stool Kitにより別々に調整したDNAからのPCR検出感度を比較した結果,大きな違いはなかった。感染したアワビ群を検出する上で,糞から熱抽出したDNAのPCRが有効である。
魚病研究,49(2), 41-48(2014)

繊毛虫Chilodonella hexastichaの寄生による野生ハスの死亡事例

岡村貴司・桑村邦彦・小川和夫
 2013年夏に滋賀県内の河川において,ハスOpsariichthys uncirostrisの死亡がみられ,その鰓に多数の繊毛虫が寄生していた。形態的特徴から,繊毛虫をChilodonella hexastichaと同定した。本虫は鰓に生理障害を起こすことが知られており,病理検査を行ったハスの鰓にはうっ血がみられたことから,ハスの死亡原因は本虫の大量寄生による呼吸障害と推定された。国内では水槽飼育の熱帯魚に寄生の報告はあるが,本虫の天然魚への寄生は国内初の事例である。
魚病研究,49(2), 49-52(2014)

チュニジア沿岸で天然のEpinephelus属魚種に発生したウイルス性神経壊死症による大量死

S. Haddad-Boubaker・W. Boughdir・S. Sghaier
J. B. Souissi・A. Megdich・R. Dhaouadi
A. Amara・V. Panzarin・E. Fakhfakh
 2012年にチュニジア北部の地中海沿岸で天然のEpinephelus marginatusおよびE. costaeに大量死亡が観察された。検査した死亡魚(6個体)と瀕死魚(1個体)には外観症状は認められなかったが,全個体の脳と網膜組織からRT-PCRによりベータノダウイルスが検出され,このうち鰾の肥大を呈した5個体からは高力価(106.0-8.8 TCID50/g)でウイルスが分離されたことから,これらの大量死はウイルス性神経壊死症によると考えられた。RNA1 とRNA2 についてのシーケンス解析の結果,これらのウイルスはいずれもRGNNV遺伝子型に分類され,その一部は2011年にイタリアやチュニジアで養殖魚から分離されたウイルスと高い相同性が認められた。
魚病研究,49(2), 53-56(2014)

保有宿主としてのスズメダイ類から検出された粘液胞子虫Enteromyxum leeiの黒海における初報告

A. Özer・T. Öztürk・H. Özkan・A. Çam
 2013年6月~7月,トルコの黒海沿岸で採捕された天然のスズメダイ類(Chromis chromis)に粘液胞子虫が検出された。腸管と胆嚢内に発育中の栄養体と多数の胞子が観察され,その形態的特徴から粘液胞子虫性やせ病原因体の1種,Enteromyxum leeiと同定された。採集地点の近隣に養殖場が存在しないことから,感染は養殖魚由来ではないと考えられた。また成熟胞子が多数観察されたことは,この魚種がE. leeiにとって本来の宿主である可能性を示す。本研究は黒海におけるE. leeiの初報告であると同時に,スズメダイ類がE. leeiの保有宿主として養殖魚への感染源になることを示唆する。
魚病研究,49(2), 57-60(2014)

アユのエドワジエラ・イクタルリ感染に及ぼす水温の影響

永井崇裕・中井敏博
 アユ(平均体重 8.6 g)に対するEdwardsiella ictaluri PH-0744株の病原性を20℃と28℃の飼育水温条件下で比較した(観察期間14日間)。腹腔内接種における本菌株のLD50/fishは,20℃で 7.4×103 CFU,28℃で<6.0×10 CFUであった。また,浸漬感染では(2.5×107 CFU/mL, 30分間浸漬),20℃ではアユは死亡しなかったが,28℃では累積死亡率が95%となり, いずれの感染実験においても20℃と比較して本菌株は28℃で強い病原性を示した。この28℃でアユに高感染死亡率をもたらす要因として,E. ictaluriの増殖温度特性(至適温度:25~30℃)が考えられた。このことが高水温期の河川魚に本病が発生する理由であると思われる。
魚病研究,49(2), 61-63(2014)