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第48巻 4号

IHNに対するアスコルビン酸高濃度投与の有効性はウイルス株や魚体サイズにより影響を受ける

石川孝典・間野伸宏・水上 海・難波亜紀
小島隆人・廣瀬一美・中西照幸
 高濃度アスコルビン酸の投与は,伝染性造血器壊死症(IHN)の被害軽減に有用な手段になり得るが,養殖場で効果がない事例もある。そこで,IHNウイルス株および魚体サイズのアスコルビン酸投与効果に及ぼす影響について,ニジマス(1 gおよび 6 g)およびヒメマス(2 g)を用いて検討した。アスコルビン酸を 5,000 mg/kg 添加した市販飼料を7日間給餌後,2つのウイルス株(TK8901, TV0026)で人為感染を行った。TV0026株の人為感染では,ヒメマスおよび 6 gのニジマスにおいて有意な生残向上効果が確認された。一方,TK8901株の感染では,有意な効果は認められなかった。以上のことから,ウイルス株や魚体サイズの違いはアスコルビン酸の高濃度投与が養殖場で安定した生残率向上効果を示さない原因の1つであることが示唆された。
魚病研究,48(4), 113-118(2013)

養殖ブリの微胞子虫性脳脊髄炎

横山 博・宮崎洋平・良永知義
 中国産輸入カンパチ種苗の「キリキリ舞い」を特徴とする疾病はSpraguea属に近縁の神経系寄生微胞子虫による脳脊髄炎であることが報告されている。本研究では,2010年に発生した養殖ブリにおける類似の疾病について調査した。ブリ病魚の中枢神経系から微胞子虫が検出され,形態学的観察と遺伝子解析によりカンパチの脳脊髄炎原因微胞子虫と同種であると判断された。病理組織学的には,ブリ病魚の神経組織にグリオーシスや神経線維の変性,神経細胞の空胞化などを伴う脳脊髄炎および病変部に微胞子虫の胞子塊が観察された。2010年に発病がみられたブリ養殖場での定期調査の結果,2011年および2012年には本疾病の発生例はなく,微胞子虫の寄生率も減少したことが示された。この微胞子虫は,おそらく中国産輸入種苗カンパチとともに日本に持ち込まれ,養殖ブリに伝播したと考えられる。
魚病研究,48(4), 119-125(2013)

スッポン由来細胞の樹立とその特性

J. P. Fu・Z. Luo・Y. Yan・P. F. Zou・S. H. Zhang・Q. W. Qin・P. Nie
 スッポンPelodiscus sinensisの頭蓋外頸動脈に由来する細胞を新規に樹立した。STA(soft-shelled turtle artery)と名付けられたこの細胞は抗 a 平滑筋アクチン抗体と反応することから筋肉細胞と考えられ,染色体数は2n=66であった。STA細胞はFBSを10%添加したDMEM/F12またはM199培地でよく増殖し,28℃付近が増殖適温と考えられた。本細胞は,GFP発現系pTurboプラスミドによるトランスフェクション効率は約30%と高く,また増殖支持性は低いもののスッポンの病原体として知られているsoft-shelled turtle iridovirus (STIV)に感受性を有する。スッポン由来の細胞系はいくつか報告されているがそれらのウイルス感受性についての知見は乏しいことから,本STA細胞は今後スッポンのウイルス病等の研究に有用と考えられる。
魚病研究,48(4), 126-134(2013)

北海道のサケから分離された冷水病原因菌の遺伝子型

畑山 誠・三坂尚行・水野伸也・小出展久
 北海道のサケ孵化場にて,ある河川に2006~2008年に回帰したサケ親魚雌から各年3回(合計9回),また2007年に回帰した親魚由来で冷水病を発症した稚魚から1回,冷水病原因菌を分離し,保有プラスミドとRAPDによりタイピングを行った。親魚から分離した菌は毎回複数のタイプで構成され遺伝子型の出現パターンは年ごとには変化していたが,年度内で類似する傾向があり,年毎に変化する河川内の感染源を共有することが示唆された。稚魚から分離した菌は全てが同じRAPDタイプで,その親魚群から高頻度に出現したものであった。このことから,親魚から稚魚へ菌が伝播したと思われた。
魚病研究,48(4), 135-138(2013)