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日本魚病学会事務局(2013年1月より)
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第48巻 1号

南オーストラリアの蓄養ミナミマグロで見られた2種の住血吸虫

白樫 正・常本和伸・C. Webber
K. Rough・D. Ellis・小川和夫
 オーストラリアで蓄養されていたミナミマグロの鰓に住血吸虫が見つかったため,同定を試みた。形態観察と遺伝子解析の結果,本虫はこれまで日本の太平洋クロマグロからしか報告が無いCardicola orientalisと同定された。ミナミマグロの鰓弁には多数の虫卵がみられ,鰓1枚から70虫以上の虫体が検出されたことから,何らかの病害性があると考えられる。また,心臓にみられたC. forsteriの形態と遺伝子情報についても新たな知見が得られた。本論文は,ミナミマグロからのC. orientalisの初報告である。本種は,ミナミマグロの養殖に影響を及ぼすと考えられる。
魚病研究,48(1), 1-4(2013)

ウイルス性神経壊死症の防除を目的とした電解海水によるクエおよびマハタ受精卵の消毒条件の検討

渡邉研一・井手健太郎・岩崎隆志
佐藤 純・森 広一郎・米加田徹
 クエおよびマハタにおけるウイルス性神経壊死症(VNN)原因ウイルス(ベータノダウイルス)の垂直感染を防除することを目的として,電気分解した海水(電解海水)による受精卵の適正な消毒条件を検討した。0~1.5 mg/Lの遊離塩素を含む電解海水に受精卵を浸漬したところ,両魚種ともに 0.3~0.5 mg/Lでは5分,1.0 mg/Lでは3分,1.5 mg/Lでは1分浸漬しても,ふ化率に影響はなかった。ベータノダウイルスを遊離塩素濃度 0.3~1.0 mg/Lで3分または 1.5 mg/Lで1分処理すると,99.4%以上のウイルスが不活化された。
魚病研究,48(1), 5-8(2013)

Vibrio anguillarum感染に対するEnterococcus gallinarum のプロバイオティクス効果

L. Sorroza・F. Real・F. Acosta・B. Acosta・S. DénizL. Román・F. E. Aamri・D. Padilla
 海水魚養殖で用いるプロバイオティクス細菌の探索を目的に研究を行った。海水魚4種の消化管から分離した195株の中にV. anguillarumに対して強い抗菌作用を示す細菌が1株見つかった。本分離株はE. gallinarumに同定され,in vitroV. anguillarumに対して優れた腸管粘液付着阻害および増殖阻害作用を示した。本分離株を餌に混ぜて20日間シーバスに投与してからV. anguillarumで浸漬攻撃したところ,弱いながらも感染予防効果を示した。本分離株は長期間腸内に留まり,本分離株を腹腔内接種されたシーバスに異常は認められなかった。以上のことから,本分離株E. gallinarum L1 はプロバイオティクスとして使用できる可能性がある
魚病研究,48(1), 9-12(2013)

アサリに寄生するPerkinsus属原虫2種の栄養体増殖と遊走子嚢発達に及ぼす温度と塩分の影響

梅田剛佑・下川 潤・良永知義
 Perkinsus olseniP. honshuensisの,栄養体の増殖と遊走子嚢発達の指標としての遊走子放出率に対する温度と塩分の影響をin vitroで調べた。これらの環境要因の影響は,2種間で大きな差はなかった。栄養体は両種とも28℃でよく増殖し,P. olseni は塩分18-21‰,P. honshuensisは塩分21-33‰で最もよく増殖した。前遊走子嚢からの遊走子の放出は,P. olseniP. honshuensisともに25-30℃,25-35‰で最も高かった。日本各地のアサリにおけるPerkinsus属原虫の寄生に関しては,2種が識別される以前の研究では河口域(低塩分濃度)で感染率が低いことが示され,また,最近,2種の間ではP. olseniが優占種であることが報告されている。しかし,本研究では,これらの現象を説明できるようなPerkinsus属原虫2種の増殖・発達特性を見出すことはできなかった。
魚病研究,48(1), 13-16(2013)

シロサケから分離された冷水病菌株の病毒性の差異

三坂尚行・畑山 誠・小出展久・鈴木邦夫
 北海道内の無症状のシロサケから分離された冷水病菌10株および標準株について,シロサケ稚魚(体重 1.01-1.36 g)に対して腹腔内注射による感染試験を行い,毒力を比較した。さらに過去の報告から毒力との関連があるとされるエラスチン分解活性の有無を各株について調べ,毒力との関連を検討した。シロサケから分離された10株のLD50 は体重 1 gあたり 2.64×105 から4.74×107 CFUと大きな差異を示した。株のエラスチン分解活性と毒力の間に明確な関係は認められなかった。
魚病研究,48(1), 17-20(2013)

イシダイ脾臓組織からのqPCRによるRSIVゲノムの定量的検出法の最適化

呉 昭映・西澤豊彦
 イシダイの脾臓組織からのPst I fragment遺伝子を標的とした qPCRによるRSIVゲノムの定量的検出法の最適化について検討した。RSIVゲノムの定量的検出用標準直線は,y=-0.266x+10.95(y: log10 遺伝子数, x: Ct値,PCR増幅効率:84.5%)となった。本標準直線では,Ct値8~33においてRSIVゲノムの定量的検出が可能であり,定量的検出限界は約 100 RSIV genomes/reaction (103.5 genomes/mg)と推定された。本標準直線に基づき,RSIVで人為感染させたイシダイの脾臓組織からRSIVゲノムの定量的検出を試みたところ,RSIV接種後7日目までRSIVゲノムは検出限界以下であったが,接種後10日目以降では ≥106.71±1.77 genomes/mg (mean ± SD)のRSIVゲノムが検出された。
魚病研究,48(1), 21-24(2013)

養殖場のNeobenedenia girellae防除における遮光の有効性

白樫 正・平野千早・A. b. Asmara
N. b. M. Noor・石丸克也・宮下 盛
 ハダムシ防除における遮光の有効性を養殖場での実験で検証した。カンパチ稚魚を入れた網カゴを遮光幕で覆った生簀内に垂下したところ,自然光下よりハダムシ数が約70%少ないことが分った。明暗条件下のN. girellae感染実験では両試験区の間に大きな差は見られず,ふ化幼生は暗条件でも寄生が可能なことが示された。これらの結果から,養殖生簀を遮光すると,ふ化幼生が照度の高い水域に移動するため,寄生被害を軽減できる可能性が示された。
魚病研究,48(1), 25-28(2013)

カワハギのβ溶血性レンサ球菌症に対する市販ヒラメ用ワクチンの有効性

石井佑治・山田敏之・杉原志貴・高見生雄
菅 向志郎・金井欣也
 市販ヒラメ用β溶血性レンサ球菌症ワクチンがカワハギのS. iniae感染症に有効か否かを検討した。まず,攻撃方法を決定するためにカワハギ由来のS. iniaeを用いて人為感染試験を行った。その結果,筋肉接種法では 102 CFU/100 g 魚体重の攻撃菌数で死亡率は90%となった。一方,浸漬法では攻撃菌数108 CFU/mL,浸漬時間30分間でも死亡率は60%にとどまった。ワクチンの有効性試験では常用量およびその 1/10 量による免疫で有効性が確認された。常用量で免疫し,2週間,1か月,3か月および7か月後に攻撃試験を行って予防効果を調べたところ,どの時点でも有効率(RPS)は80%以上であった。以上の結果から,ヒラメβ溶血性レンサ球菌症不活化ワクチンはカワハギのS. iniae感染症に有効であり,免疫効果が長期間持続することが示された。
魚病研究,48(1), 29-31(2013)