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第45巻 2号

単生類Heterobothrium okamotoi孵化幼生の行動特性

白樫 正・中塚周哉・宇田川彰久・小川和夫
 トラフグに寄生するH. okamotoiの孵化幼生の行動特性を記載した。幼生の行動は,強い繊毛運動によって前進する遊泳期と,繊毛運動が弱く同一地点に留まる静止期の繰り返しから成っていた。遊泳・静止期の長さは個体差が大きいが,孵化後日数の経過とともに静止時間が増加した。幼生が海水より重いこと,体前部を鉛直下方に向けることから,経時的に沈降する傾向があった。水平方向にはランダムな運動性を示し,走光性はなかった。こうした孵化幼生の行動特性は,底棲性の宿主への遭遇確率を高めるための適応と思われる。
魚病研究,45(2), 51-57(2010)

加温処理時のアユ体内および飼育水中の冷水病菌の動態

菅原和宏・永田恵里奈・江口 充
 MCY液体培地および滅菌地下水中における冷水病菌の種々の温度における増殖と生残を調べたところ,いずれにおいても冷水病菌は28℃で2日以内にコロニー形成能を失った。つぎに,冷水病に人為感染させたアユに対して,抗菌剤投与による治療,23℃または28℃の加温処理を行い,処理中や処理後の魚体内および飼育水中の冷水病菌の動態を調べたところ,28℃で3日間の加温処理後に魚体内および飼育水中から冷水病菌が検出されなくなった。28℃,3日間の加温処理がアユの冷水病治療に有効であることが示された。
魚病研究,45(2), 58-65(2010)

各種化学物質の滑走細菌症原因菌に対する抗菌効果

渡邉研一・西岡豊弘
 水産用や観賞魚用に承認されている消毒剤,殺菌効果を持つ食品添加物や薬用化粧品等12種類の化学薬品の滑走細菌症原因菌T. maritimumに対する最小発育阻止濃度を調べたところ,ブロノポールおよび安定化二酸化塩素が最も低かった(1.0 μg/mL)。次に,これら2薬剤の原因菌に対する最小殺菌濃度(MBC)を求めたところ,6時間作用で 4.0 または≦8.0 μg/mLであった。さらに,5種類の海産魚に対する6時間薬浴で,MBCの5倍以上の濃度でも安全性が確認されたことから,これら2剤が滑走細菌症の治療薬の候補になると考えられる。
魚病研究,45(2), 66-68(2010)

種苗生産中のクロマグロ大量死へのVNNの関与

西岡豊弘・森 広一郎・菅谷琢磨・手塚信弘・武部孝行・今泉 均・久門一紀・升間主計・中井敏博
 クロマグロの種苗生産中に発生した大量死の原因についてウイルス学的に検討した。大量死は主にふ化20日齢までの仔魚に発生し,一部の事例では死亡魚の中枢神経系および網膜組織に顕著な空胞形成が認められ,それらの病変部にベータノダウイルスの抗原が蛍光抗体法により検出された。またPCRおよびウイルス分離試験においても本ウイルス(RGNNV遺伝子型)の存在が確認された。これらの結果から,VNNがクロマグロ仔魚の大量死に関与していると考えられる。
魚病研究,45(2), 69-72(2010)

ELISA法による抗RSIVブリ抗体の検出

權 世蓮・西澤豊彦・高見生雄・吉水 守
 RSIV培養液を接種したブリからの抗RSIV抗体検出ELISA法について検討した。培養液に含まれるFBSの主要成分であるBSAに対する抗ブリ血清を用いた場合,血清に終濃度50%(v/v)となるようFBSを添加し25℃で 1 時間処理することで,血清中の抗BSA抗体が完全に吸収された。培養RSIV液で攻撃した生残ブリから得た血清を同様に処理することで,抗体検出ELISAにより抗RSIV抗体が検出できることが明らかになった。
魚病研究,45(2), 73-76(2010)

日本におけるVibrio tapetisのアサリ病貝からの初分離

松山知正・坂井貴光・桐生郁也・湯浅 啓・安信秀樹・川村芳浩・佐野元彦
 2008年4月から7月にかけて,兵庫県において垂下養殖中のアサリに大量死亡が発生した。外套膜縁の茶褐色の沈着から,ブラウンリング病(BRD)が疑われた。病貝から分離された菌は,DNAアレイ,生化学的性状および塩基配列解析からV. tapetisに同定された。人為感染試験において,分離菌を接種した貝は10~20%が死亡し,生残した貝の33~63%にBRDの症状が再現されたことから,本事例はBRDによると判断された。
魚病研究,45(2), 77-79(2010)

Renibacterium salmoninarumの表在抗原p57をELISA用抗原とした抗体検出

松井崇憲・大迫典久・西澤豊彦・吉水 守
 R.s. 表在抗原p57 のELISA用抗原への利用について検討した。ホルマリン死菌(FK- R.s.)固相化プレートでは,FK-R.s. およびPBS接種したサクラマスとニジマスの血清のELISA値は各々 0.16~2.6 と 0.12~1.59 で,FK-R.s. 接種魚血清のELISA値はPBS接種魚血清に比べ高かったが,PBS接種魚血清の何れも 0.1 より高い値を示した。p57 固相化プレートでは,FK-R.s. 接種魚血清のELISA値は,0.02~1.28 であったが,PBS接種魚の血清は何れも 0.1 以下となった。p57 をELISA抗原とすることで抗R.s. 抗体の特異検出が可能になった。
魚病研究,45(2), 80-83(2010)

ネオンテトラの口吻部にできた軟骨腫

R. Sirri・L. Mandrioli・B. Bacci・M. Morini・G. Bettini
 ネオンテトラの口吻部左側に境界がはっきりした光沢のある固い腫瘤が形成され,餌をとることが困難となった。組織検査の結果,この腫瘤は硝子様軟骨基質にある軟骨細胞が多数集まった楕円形の細胞巣からなっていた。さらに,担空胞性の細胞と細胞質が淡く好酸性に染まる丸い核を持つ細胞が認められた。しかし,細胞分裂像はほとんど観察されなかった。これらの特徴から,この腫瘤は口吻部にできた軟骨腫と診断された。免疫染色の結果,哺乳類で癌細胞の発達に関与するp53,Bcl-2 およびh-TERTの蓄積は認められなかった。
魚病研究,45(2), 84-87(2010)

カンパチ,マダイおよびマウスに対するMycobacterium marinumの病原性

S. Weerakhun・和田新平・畑井喜司雄・佐野文子・仁部玄通・平江多績
 筋肉内接種による人為感染試験の結果,ブリ病魚由来Mycobacterium marinum NJB 0419株のカンパチおよびマダイに対する病原性が確認された。動物由来感染症の観点から,BALB/cマウスに対する本菌の病原性を血管内及び皮下接種により検討した結果,病理組織学的変化や組織中の菌の存在が認められず,再分離もされなかった。本菌は哺乳類には病原性を示さないと考えられた。
魚病研究,45(2), 88-91(2010)

ハタハタにみられた非定型Aeromonas salmonicida感染症

和田新平・尾関一輝・倉田 修・畑井喜司雄・石田 綾・宇井賢二郎
 2009年3月から5月に,秋田県下の水族館で飼育されていたハタハタに異常な死亡(累積死亡率52.5%)がみられた。病魚にはスレによると考えられる下顎のびらんを除いて外部症状は認められなかったが,剖検すると体腎が腫大し粟粒結節がみられた。病理組織学的には,内臓諸組織に著しい細菌の増殖像(集落)が観察された。体腎と脾臓から単一の細菌が分離され,生化学的および血清学的性状から非定型A. salmonicidaに同定された。
魚病研究,45(2), 92-95(2010)