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第42巻 4号

ベータノダウイルス検出のための標準 PCR 法(ANZSDP)の評価

M. St. J. Crane, K. A. McColl, K. R. Davies, L. M. Williams, J. G. Young, N. J. Moody
 オーストラリアとニュジーランドでベータノダウイルスの検出に使用される標準 nested PCR 法(ANZSDP VNN PCR)を検証した。本法は,市販の PCR キット(IQ2000™ VNN Kit)に比べて,オーストラリアのベータノダウイルス株(RGNNV 遺伝子型)の検出において,その精度と感度が優れていた。しかし,プライマー配列のミスマッチにより,SJNNV 遺伝子型を検出できないという欠点を有し,この点での改良の余地がある。
魚病研究,42(4),173-179(2007)

ヒラメβ溶血性レンサ球菌症のファージ治療試験

松岡 学・橋爪貴也・神崎博幸・岩本恵美・S. C. Park・吉田照豊・中井敏博
 ヒラメの養殖環境から Streptococcus iniae ファージを 6 株分離した。これらのファージに対してヒラメ由来 S. iniae 株の多くが感受性を示した。ファージ治療試験において,菌をヒラメの腹腔内に注射し,その 1,12,24時間後にファージを腹腔内に注射した結果,ファージ接種区の生残率は対照区に比べていずれも有意に高かった。しかし,ファージ区の死亡魚から高率にファージ非感受性菌が検出されたため,このファージ非感受性菌の出現が今後の課題として残された。
魚病研究,42(4),181-189(2007)

養殖ウナギのウイルス性血管内皮壊死症の原因ウイルスの分離

小野信一・若林耕治・永井 彰
 新たに樹立したウナギの血管内皮由来株化細胞(JEEC)を用いて,ウイルス性血管内皮壊死症病魚から原因ウイルスの分離培養及び病原性の確認を行った。ウイルス感染した JEEC 細胞の核は肥大し,核内に直径 75 nm の正20面体の DNA ウイルス粒子が確認された。ウイルスはクロロホルムおよび酸に耐性を示したことから,アデノウイルスと考えられた。感染実験の結果,自然発病魚と同様の症状を示し,本ウイルスが原因ウイルスであると考えられた。
魚病研究,42(4),191-200(2007)

シロサケにおける冷水病原因菌 Flavobacterium psychrophilum の検出と分離株のサケ科魚類幼魚への病原性

三坂尚行・鈴木邦夫
 北海道の 8 河川のシロサケ親魚体腔液及び 9 孵化場の稚魚腎臓から,培養法と16S rDNA に対する PCR により F. psychrophilum の検出を行った結果,検出率はそれぞれ体腔液で3.3〜90%,33.3〜100%,稚魚で 0 〜 5 %,5 〜42.5%であった。分離株は抗血清凝集反応,生化学的及び遺伝学的性状から F. psychrophilum と同定された。シロサケ,ニジマス及びサクラマス幼魚に分離株を体重 1 g 当たり 5.3 × 105〜3.9 × 106 CFU 腹腔内注射すると30日後に最大95%の累積死亡率が見られた。
魚病研究,42(4),201-209(2007)

粘液胞子虫性やせ病に罹患した養殖トラフグの病態生理

石松 惇・林 正裕・中根基行・鮫島 守
 Enteromyxum leei の感染による粘液胞子虫性やせ病のトラフグでは,血漿 Cl-濃度と肥満度の間に負の相関があった。外科的に胃幽門部を閉塞した個体では,体重が50時間以内に24%減少した。このことから,痩せる原因として腸管での浸透圧調節機能不全が示唆されたが,in vitro での腸管水吸収能には発病魚と無感染魚で差がなかった。発病魚の肝臓重裏比は無感染魚の30%しかなく,LDH,AST 及び ALT 活性も有意に低かった。やせ病による急激な体重減少は浸透圧調節障害が主原因であるが, 栄養障害も発症機序に関わっていると推測した。
魚病研究,42(4),211-217(2007)

サラサハタ幼魚のベータノダウイルス感染に及ぼす高水温の影響

湯浅 啓・I. Koesharyani・K. Mahardika
 サラサハタ幼魚をベータノダウイルスに感染させ,27℃,31℃,35℃で各10尾を14日間飼育したところ,27℃で 5 尾,31℃で 8 尾,35℃で 9 尾が生存した。それらの生残魚から,RT-PCRにより27℃で 4 尾,31℃で 2 尾からウイルス遺伝子が検出されたが,35℃の魚からは検出されず,また27℃の生残魚だけに網膜神経組織の空胞化が認められた。以上の結果から,高水温飼育により魚体内での本ウイルスの増殖が抑制されると考えられた。
魚病研究,42(4),219-221(2007)

脳脊髄炎を主徴とした養殖ブリの新たな疾病

片桐孝之・細川愛加・舞田正志・平井真紀子・高木修作・延東 真
 ここ数年来夏から秋にかけて宇和島海域の養殖ブリ 0 歳魚に原因不明の大裏死が発生している。本疾病は食欲不振,突進を含む異常遊泳,中枢神経系の発赤などを特徴とし,病理組織学的には脊髄前半部に神経細胞の壊死,グリア結節,グリオーシス,出血とうっ血,神経線維の変性などを伴う高度の脳脊髄炎が見られた。さらにそこに小さな核様構造を 1 〜 2 個持つ直径 4μm 程度の寄生虫様細胞を多数含む構造物が存在した。脳脊髄炎の原因として,脊髄から見つかった寄生虫様体が疑われる。
魚病研究,42(4),223-224(2007)

ベータノダウイルスが増殖可能な上限温度

端 直美・冲中 泰・坂本貴洋・岩本季典・中井敏博
 RGNNV はベータノダウイルスの中で最も高温に適応している。本研究では世界各地から収集した RGNNV 16株を30℃,32℃,35℃あるいは37℃で培養し,これらの株の増殖上限温度を調べた。その結果,増殖上限温度は株に依存して30℃未満から35℃と様々であったが,37℃で増殖する株は存在しなかった。また,ウイルス増殖とウイルス RNA 複製との間には正の相関が見られ,温度はウイルス RNA 複製かそれより早期の感染・増殖過程に影響すると考えられた。37℃での非増殖性はヒトへのベータノダウイルス感染が起こらないことを示唆する。
魚病研究,42(4),225-228(2007)