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第42巻 1号

二枚貝の液性生体防御因子に関する研究の歴史と現状

室賀清邦・高橋計介
 二枚貝類の液性生体防御因子については,比較免疫学,養殖貝類の病害防除,環境モニタリングおよび生理活性物質の探索を目的として研究されてきたが,本稿では主として養殖貝類の病害防除の観点からこれらの研究を取り纏めた。液性因子としてレクチン,リゾチーム,抗菌ペプチド,フェノールオキシダーゼ,およびその他の因子(プロテアーゼ・インヒビター,リソソーム酵素等)を取り上げ,それぞれの研究の歴史,分子構造,および機能について概説した。防御因子としての役割については,特定の病原体に対する具体例をいくつか紹介した。
魚病研究,42(1),1-17(2007)

2種類のヒラメ免疫グロブリンの精製および Lactococcus garvieae の抗原解析

申 起旭・金 永林・申 容承・李 應具・呉 明柱・吉田照豊・鄭 泰成
 2 種類の異なる手法で精製されたヒラメ免疫グロブリン(IMMIg および MPBIg)は,重鎖の分子量および等電点において相違し,さらに質量分析法による解析から,それらはそれぞれ IgM とその前駆物質であることが判明した。各 Ig に対するモノクローナル抗体を用いた免疫検出により,IMMIg と MPBIgは L. garvieae の異なる抗原と反応した。このことは,本菌に対するヒラメの感染防御に,異なる免疫グロブリンが関与していることを示唆する。
魚病研究,42(1),19-28(2007)

口白症感染耐過トラフグ血清を用いた口白症関連タンパク質の検出

高見生雄・粉川愉記・西澤豊彦・吉水 守
 口白症耐過トラフグ血清による免疫染色で本症耐過魚の脳組織から分子量 100〜120 kDa のタンパク質(KAPs)が検出された。KAPs は,健常魚の脳組織にも存在したが,健常魚血清では認識されなかった。KAPs は,病魚脳磨砕液の超遠心上清分画に存在し,病原性は沈殿分画により強く認められたことから,KAPs は脳組織成分の抗原性が変化したもので,病原体本体ではないと考えられた。また,病原体構成成分が耐過魚血清に全く認識されないことから,その抗原性は極めて低いと考えられた。
魚病研究,42(1),29-34(2007)

口白症トラフグ脳磨砕濾液を用いた人為感染試験によるブリでの発症

高見生雄・粉川愉記・西澤豊彦・吉水 守
 口白症トラフグの脳磨砕濾液を接種したトラフグ近縁魚種 3 種(クサフグ,ヒガンフグ,ハコフグ)は口白症に対し高い感受性を示したが,イシダイ,メジナおよびマダイは死亡しなかった。大型(平均 530 g)および小型(平均 12 g)のブリにおける累積死亡率は各々60%および100%で,死亡した大型ブリに症状は認められなかったが,小型ブリでは痙攣および脊柱の側湾が認められ,一部の死亡魚では狂奔等の異常行動や口吻部のびらんが観察された。
魚病研究,42(1),35-39(2007)

Streptococcus iniae 莢膜欠損変異株におけるビルレンスの低下

首藤公宏・金井欣也・吉越一馬
 Streptococcus iniae の病原性における莢膜の役割を明らかにすることを目的に,S. iniae NUF631 を親株として Tn916 挿入変異による莢膜欠損変異株を作出し,ヒラメに対するビルレンスおよび腹腔内マクロファージ(Mψ)の食作用に対する抵抗性を親株と比較した。その結果,変異株はビルレンスが高度に低下しており,Mψに貪食されやすく,Mψの活性酸素の産生を誘導し,Mψ内で殺菌された。このことから,莢膜はMψ内での S. iniae の生存に役立っていると考えられた。
魚病研究,42(1),41-48(2007)

種苗生産過程のスジアラ受精卵およびふ化仔魚に認められた Ichthyodinium 属原虫感染症

森 広一郎・山本和久・照屋和久・塩澤 聡・與世田兼三・菅谷琢磨・白樫 正・伊藤直樹・小川和夫
 1990年以降,八重山栽培技術開発センターにおいて,種苗生産過程のスジアラの受精卵に寄生する原虫による大裏死亡が発生している。原虫は卵黄内で分裂増殖し卵黄破裂を引き起こした。原虫はヨーロッパで知られる肉質鞭毛虫類 Ichthyodinium chabelardi に酷似していたが,感染様式,発達過程,SSU rDNA 配列の違いから未分類種,Ichthyodinium sp. PL とした。オキシダント殺菌海水中で産卵させることで病気の発生が防除できた。
魚病研究,42(1),49-57(2007)

キハダ受精卵およびふ化仔魚の Ichthyodinium 属原虫感染症

湯浅 啓・釜石 隆・森 広一郎・J. H. Hutapea・G. N. Permana・中澤昭夫
 バリ島内の種苗生産施設で,キハダ受精卵およびふ化仔魚に原虫感染症が認められた。原虫の増殖によりふ化仔魚の卵黄が破裂し,高い死亡率を示した。産卵直後の受精卵を滅菌海水に移入した場合,ふ化仔魚に感染は認められず,原虫は産卵後に飼育水を介して卵内に侵入すると判断された。原虫は形態および 18S rRNA の塩基配列から,大西洋イワシ受精卵に寄生する Ichthyo-dinium chabelardi と同種または近縁種と考えられた。
魚病研究,42(1),59-66(2007)

トラフグ口白症に対する感染防御誘導の試-

高見生雄・西澤豊彦・吉水 守
 口白症病原体液を0.3%ホルマリンで 7 日間処理した後,健常トラフグに接種し25℃で 2 週間飼育したところ,累積死亡率は79%となり,口白症病原体が 7 日間のホルマリン処理でも不活化されないことが明らかになった。同病原体液をホルマリンで 7 日間処理した後トラフグに接種し,水温18〜20℃で14日間飼育したところ,口白症の発症と死亡が抑えられた。しかし,生残魚に口白症病原体液を再接種し,25℃で飼育したところ,全個体が発症・死亡した。ホルマリン処理病原体液は口白症に対する感染防御能を誘導しなかった。
魚病研究,42(1),67-69(2007)

キジハタの鰓に寄生する単生類 Pseudorhabdosynochus epinepheli の出現と過酸化水素浴による治療試験

一色 正・長野泰三・三木勝洋
 1997年以降,香川県栽培漁業センタ−のキジハタに鰓寄生虫 P. epinepheli 感染症が発生して問題となっている。本虫に対する過酸化水素(H2O2)700 ppm 浴の駆除効果を in vivo で検討した結果,海水温10℃あるいは15℃で45分間,20℃あるいは25℃で15分間の薬浴が有効であった。H2O2 700 ppm 浴に伴うキジハタの死亡は25℃で30分間以上の処理で確認されたが,10, 15あるいは20℃で60分間の処理では確認されなかった。したがって,H2O2 は本寄生虫症の有効な治療薬となる可能性がある。
魚病研究,42(1),71-74(2007)