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第38巻 4号

総説:魚類寄生ミクソゾアに関してわかったこと,わからないこと

横山 博
 サケ科魚類の旋回病の原因となるMyxobolus cerebralis において,粘液胞子虫世代と放線胞子虫世代が交番する二相性生活環が発見されて以来,魚類に寄生するミクソゾアの研究は飛躍的に進展した。分子系統解析によりミクソゾアは原生動物ではなく後生動物であることが解明され,分類学が再整理されつつある。一方,生物学的,病理学的には未知の点も多いことが有効な感染防除対策の確立を困難にしている。最近の研究動向として,耐病性系群の導入と貧毛類の制御法の開発が注目されている。

マダイの Edwardsiella tarda 実験感染における白血球の動態と組織病理

樋田史郎・金井欣也・吉越一馬
 マダイの Edwardsiella tarda 実験感染において,循環血中の白血球の動態と炎症巣における組織病理を経時的に調べた。菌を筋肉接種した翌日,循環血リンパ球が減少し,顆粒球は増加した。単球は接種 4 日後に減少し,それ以後増加した。炎症巣には,まずリンパ球および顆粒球が遊走し,単球はやや遅れて動員され,既報の実験的炎症における経過と類似していた。接種部,腎臓,脾臓などに肉芽腫が形成され,肉芽腫性炎の進展と循環血中の白血球の動態との間に関連が認められた。

ウイルスの関与が疑われるマコガレイ仔稚魚の病理組織学的変化

一色 正・長野泰三・安部昌明・宮崎照雄
 1989年以降に香川県下の種苗生産場のマコガレイ仔稚魚に,眼球突出や腹部膨満を示す病魚がしばしば発生して問題となっている。病魚を病理組織学的に検討した結果,最も特徴的な病変は肝臓,尿細管上皮,膵臓および腸管上皮における合胞体形成を伴った壊死であった。壊死した肝細胞の電子顕微鏡観察では,結晶状に配列したウイルス様粒子を含む細胞質内封入体の形成が確認された。これらの結果から,本疾病の発生にはウイルスの感染が関わっているのではないかと推察された。

EUS 感染病魚から分離されたエロモナス属新菌種 Aeromonas sp. T8 グループの病原性

M. M. Rahman・T. Somsiri・田島研一・絵面良男
 新菌種 Aeromonas sp. T8 グループ 4 菌株の病原性を調べた。代表菌株 T8 株の南方系 3 魚種の筋肉内接種による LD50 値は,1.5~3.2×105 CFU/尾であった。マウスの腹腔内および尾静脈内接種(3×107 CFU/マウス)では,すべての株で病原性は見られなかった。また,1 株の細胞外産生物質(ECP)は,魚類および哺乳類の株化細胞に対して細胞変性を引き起こした。4 菌株の ECP の溶血活性は,哺乳類よりも魚類の赤血球細胞に対して高かった。

マガキ卵巣肥大症原因寄生体 Marteilioides chungmuensis 検出用 DNA プローブの開発

伊藤直樹・尾田 正・良永知義・小川和夫
 マガキの卵巣肥大症原因寄生虫 Marteilioides chungmuensis の SSU rRNA 遺伝子の塩基配列を解析した。それをもとに開発した nested-PCR による本虫の検出法は,従来の肉眼または組織切片による方法よりも感度が良好であった。また,以前に開発した in situ hybridization 法と今回確立した PCR 法は,近縁の Paramyxea 門原虫 2 種と交差を示さず,特異性の高さが確認された。

水溶性アジュバントの添加によりアユ冷水病ワクチンの有効性は向上する

H. M. Rahman・乙竹 充・中西照幸
  3 種類の市販水溶性アジュバント(Montanidae IMS-1311,IMS-1312,IMS-2212)を用いて,アユ冷水病ホルマリン不活化ワクチンの有効性を検討した。ワクチン投与 4 週間後に攻撃実験を行ったところ,IMS-1311 および IMS-1312 を添加したワクチン区は,アジュバント無添加ワクチン区に比べて累積死亡率が低く,オイルアジュバントに匹敵する添加効果が認められた。水溶性アジュバントはオイルアジュバントに比べて,残留期間は短かったが,25 μL/尾(1.7g ± 0.5 g)以上の投与では毒性が認められた。

台湾由来の伝染性皮下造血器壊死症ウイルス(IHHNV)の他地域由来株との遺伝子比較

H.-L. Hsia・L.-L. Chen・S.-E. Peng・H.-T. Yu・C.-F. Lo・G.-H. Kou
 台湾由来の 3 株,タイ,エクアドル由来各 1 株のIHHNV について遺伝子配列を解読し既報のハワイおよびメキシコの各 1 株と比較した。IHHNV は全体としては互いに類似していたが,台湾の 1 株はタイ由来の株により近かった。他の 2 株はハワイおよび中南米の 3 株と極めて近似し,台湾には異なる地域型のウイルスが存在すると考えられた。台湾 1 株およびタイの株は東南アジアの地域型として進化しつつあるものと思われた。

インドネシアのナズマの一種 Pangasius hypophthalmus から初めて分離された Edwardsiella ictaluri

湯浅 啓・Edy Barkat Kholidin・Novita Panigoro・畑井喜司雄
 2002年 2 月,インドネシア,スマトラ島の陸上素掘り池で飼育中の P. hypophthalmus(体重 200‐300 g)に鰓褪色,体表点状出血,血腹水の貯留,腎臓,脾臓,肝臓の腫大および小白斑を症状とする大裏死亡が発生した。瀕死魚の内臓からグラム陰性桿菌が分離され,E. ictaluri に同定された。感染実験により,供試魚は自然発病魚と同じ病微を示し死亡した。本菌は継代と長期の保存により,病原性が低下した。

各種消毒剤の Oncorhyncus masou virus(OMV)に対する不活化効果

羽鳥秀一・本西 晃・西澤豊彦・吉水 守
 ポピドンヨード液,次亜塩素酸ナトリウム液,塩化ベンザルコニウム液,クレゾール石ケン液,ホルムアルデヒド液および過マンガン酸カリウム溶液の OMV 不活化最小濃度は,15℃・20分間の反応で各々40,50,100,100,3,500および 16 ppm であった。また,OMV のそれら薬剤に対する感受性は,IPNV,IHNV,HIRRV より高かった。従って,OMV 感染症には,IPN や IHN に対する防除対策が有効であると考えられる。