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第50巻 2号

ブリより分離された抗血清非凝集性Lactococcus garvieae

追中大作・吉村直人・福田 穣・山下亜純
浦崎慎太郎・和田善信・吉田照豊
 2012年,レンサ球菌症の症状を呈する養殖ブリより抗Lactococcus garvieae KG―血清に凝集しない細菌が分離された。この分離細菌は,L. garvieaeの16S rRNA 遺伝子をターゲットにした診断用PCRで陽性を示し,DNA-DNAハイブリダイゼーション試験では従来のL. garvieaeとの相同性が70%以上であったことから,L. garvieaeであると考えられた。形態学的・生化学的性状は従来のL. garvieaeと同じであったが,バクテリオファージに対する感受性が異なっていた。ゲル内沈降反応で非凝集性株のオートクレーブ抽出菌体抗原は,抗KG―ウサギ血清に対して沈降線を形成しなかった。さらに,BSFGE解析の結果, 異なる地域で分離された非凝集性株間で類似の電気泳動パターンを示した。
魚病研究,50(2), 37-43(2015)

ヒラメ皮膚損傷部におけるTenacibaculum maritimumの感染動態

T. Rahman・菅 向志郎・金井欣也・杉原志貴
 T. maritimumの感染メカニズムを解明するため,綿棒あるいはカミソリで皮膚に傷をつけたヒラメおよび背鰭先端部をハサミで切り落としたヒラメをT. maritimumの運動性株と非運動性変異株で浸漬攻撃し,感染および発病の有無を調べた。その結果,運動性株は綿棒による損傷では感染しなかったが,カミソリによる損傷および鰭の切り落としでは損傷部位に感染し発病させた。一方,非運動性株ではどの処置でも発病させ得なかった。カミソリで傷をつけた皮膚におけるT. maritimumの感染と増殖の様子をコロニーカウントおよび免疫組織化学で調べた。その結果,運動性株は非運動性株に比べてより多くのT. maritimumが損傷部の露出した皮膚結合組織に付着し,その後真皮,皮下組織および筋周膜に侵入し,増殖することが分かった。
魚病研究,50(2), 44-52(2015)

コイでみられた生殖腺未分化癌の病理組織学的および免疫組織化学的研究

安本信哉・古賀大滋・田中寿幸
近藤昌和・高橋幸則
 本研究では,コイ雄成魚と未成熟魚でみられた腫瘍を病理学的に検査した。病魚は腹部が膨満し,腹腔内には巨大な腫瘍が認められ,腫瘍は本来生殖巣が位置する部位に形成されていた。腫瘍は,腫瘍細胞が充実性に増殖した実質,海綿状の結合組織からなる間質によって形成され,他臓器への浸潤も認められた。腫瘍は,原発組織との類似性および分化の方向性も明らかではない未分化なものであった。また,抗サイトケラチン抗体,抗PCNA抗体および抗p53 抗体に陽性であった。以上の結果から,この腫瘍は生殖腺に由来する未分化癌であると判断した。
魚病研究,50(2), 53-59(2015)

種苗生産されたヒラメにおける粘液胞子虫ナナホシクドアKudoa septempunctataの感染動態

横山 博・呂 明媚・森 広一郎・佐藤 純
米加田 徹・良永知義
 ヒラメ寄生ナナホシクドアによる食中毒が問題となっている。本研究では,過去に感染が確認された施設で種苗生産されたヒラメにおける本虫の感染動態をPCRと検鏡で調べた。2009年2月と2011年2月生産群の寄生調査の結果,2011年級群では0歳の7月までPCRでも未検出だったが,10月からは検鏡で重度感染魚(>106胞子/g)が見られた。2009年級群では2歳の4月~11月に高率に(30%~90%)感染がみられ,寄生率,寄生強度とも一定した傾向はなかった。感染魚との同居または胞子の経口投与によって感染は成立しなかった。未感染魚を感染施設で毎月2週間飼育する試験において,感染のピークは7月であること,感染1週目で心臓から,2週目で血液と筋肉からも定量PCRで検出できることが示された。
魚病研究,50(2), 60-67(2015)

養殖カワハギStephanolepis cirrhifer に発生した非結核性抗酸菌症

深野華子・和田新平・倉田 修・水野かおり
中永和枝・星野仁彦
 2009,2010年に,愛媛県内で飼育されていたカワハギに高い死亡率を伴う疾病が発生した。病魚は顕著な腹部膨満を伴い,腹腔内には多数の白色結節を認めた。病理組織学的に本疾病は膿瘍形成性肉芽腫病変を特徴とし,肉芽腫の壊死中心には多量の細胞残渣と抗酸菌染色陽性の長桿菌集落を認めた。2009,2010年に分離した代表的な2菌株を使用し,細菌学的検査およびDNA-DNAハイブリダイゼーションを実施した結果,いずれの分離菌も迅速発育型非結核性抗酸菌であるMycobacterium chelonae近縁種であることが示された。人為感染試験を実施したところ,本菌はカワハギに対し病原性を有することが示された。本例は,国内の海産養殖魚における初の迅速発育型非結核性抗酸菌感染例である。
魚病研究,50(2), 68-74(2015)

Streptococcus parauberis serotype Iにおける亜血清型の存在

金井欣也・塗 伝灯・片山直紀・菅 向志郎
 ヒラメレンサ球菌症の原因菌S. parauberisには2つの血清型(Ⅰ型・Ⅱ型)が知られているが,両血清型抗血清に凝集しない菌が見つかった。本非凝集株に対するウサギ抗血清と従来のⅠ・Ⅱ型ウサギ抗血清を用いて行った吸収試験および定量凝集試験の結果,Ⅰ型は3つの亜血清型(Ⅰa,Ⅰb,Ⅰc)に分けられ,非凝集株はⅠc型に属した。2002年~2012年に分離されたⅠ型104株は,6株がⅠa型,91株がⅠb型,7株が Ⅰc型であった。抗Ⅰa血清(従来のⅠ型血清)はⅠa型に,抗Ⅰc血清はⅠc型にそれぞれ高い凝集価を示した。Ⅰb型は両抗血清に凝集した。Ⅱ型を含むS. parauberisの保存株188株のゲノムDNAをSmaI消化し,パルスフィールドゲル電気泳動で解析したところ,Ⅰa型,Ⅰb/Ⅰc型,Ⅱ型の3つのクラスターが形成された。
魚病研究,50(2), 75-80(2015)

庄内川の天然アユおよびその他数種の魚類におけるイカリムシLernaea cyprinaceaの寄生状況

好峯 侑・一色 正・間野静雄
K. L. Tun・良永知義
 愛知県下の庄内川で2013年5月~10月に採集したアユにおいてイカリムシ寄生が6月上旬~9月中旬に確認された。寄生率は8月下旬に最大(64.3%)であった(平均寄生率12.8%,n=627)。寄生率と水温,および寄生率と被寄生魚の体長との間には正の相関が認められた。本虫の大部分は,各鰭基部に寄生していた。また,河川を遡上できず下流域に滞留した魚群に寄生が多いことが示唆され,イカリムシはアユ資源の減少に影響を与えている可能性がある。一方,アユ以外で寄生が確認された魚種(平均寄生率)は,ゴクラクハゼ(77.1%), カマツカ(10.0%),ボラ(2.8%)およびギンブナ(9.1%)であった。このうち, 前3魚種は我が国におけるイカリムシの新宿主である。
魚病研究,50(2), 81-84(2015)